◎「うかび(浮かび)」(動詞)

「うきいはみ (浮き聚み)」の語尾濁音化。「うき(浮き)」は5・6日後に扱われます。「いはみ(聚み)」は、集まり、のような意ですが(→「いはみ(聚み)」)の項(2月23日)、「うきいはみ(浮き聚み)→うかび」は、表面に現れその現れた何かが集まり全体の印象が確かになるような動態を表現します。それは根拠たる根を離れ表面に現れており、その動態は不安定です。「白浪に秋の木の葉のうかべるを(『古今集』:「うかべる」は「うかび」の他動表現ではなく、「うかび」に完了の助動詞「り」がついたもの)」。死んだ人の魂が俗世の汚(けが)れのようなものがなくなり清らかになるようなこと(仏教でいえば、成仏)も言います。「ながれ出づる涙に今日は沈むともうかばん末を猶(なほ)思はなん(『山家集』:思いなさいな。思おう「なむ」の項)」。「れ」で可能を表現し「そんなことでは(死んだ)あいつも浮かばれない」。同じ意味で「うかみ(浮かみ)」も現れます。

 

◎「うかべ(浮かべ)」(動詞)

「うかび(浮かび)」の他動表現。浮かぶ情況にすること。「目に涙をうかべ」。

 

◎「うかれ(浮かれ)」(動詞)

動詞「うき(浮き)」に受身・自発・可能・尊敬の助動詞「れ」(終止形「る」)のついた表現の独律動詞化。ここでは「れ」は自発表現であり、意思によらず自然に浮いた状態になること。後世では「浮かれ気分」といった表現がなされますが、古代では魂が離れるというか、魂になるような状態になることも言ったかもしれません。「浮かれか行かむ恋ひつつあらずは」(万2646:恋に苦しむことがなくなるならあなたのもとへ魂になって行こう、のような表現です)。