「いいにうちくい(『いい』に打ち悔い)」。「にう」は「ぬ」→「ん」になり「くい」は「き」になった。賭博において、参加した客が「いい(良い)」に(当たりに)打ち(賭け)、そして負け(外れ)、かけなければよかったと悔いること、参加した客をそんな状態にすること。つまり、当たっているのに外(はず)れにすること、そうなる操作。その操作により何者かが利を得ます。すなわち「いんちき」は、知られぬよう工夫した何らかの方法により不正に利を図ること。さらには、知られぬように工夫されている不正なこと、それによるもの、さらには、宣伝や営業上の言動により思ったこと・ものとは異なる(それより低価値な)もの・こと、そう思わせる宣伝や営業上の言動、まで、広く「いんちき」と言われます。これは大正時代か、それより少し前に生まれた語のようです。それ以前には、賭博において主催側と参加側を、あるいは参加者相互を、同じ条件におかない、結果の人工的操作は「いかさま」と言いました。「現代はインチキ時代だといふ。何も彼もインチキだといふ。この語ほど上下老幼貴賤を問はず深く浸潤した語はなかろう。これが賭博語であることは周知の事実である」(『巷間の言語省察』浅野信(1933年))。