◎「いろ(同母)」
「いれを(入れ緒)」。「いれ(入れ)」は「いり(入り)」の他動表現ではなく、客観的対象の自動表現。客観化された表現の間接性は敬いの現れ(つまり尊敬表現)。「を(緒)」に関しては「いも(妹)」の項(3月17日)参照(これは、血のつながり、や、血のつながりのある人、のような意味です)。「いれを(入れ緒)→いろ」は、同じ処(腹)に「を」が入って入る、という意味。男(兄弟)や女(姉妹)が同母であることを表します。「いろも(同母妹・同母姉妹)」「いろせ(同母背・同母兄弟)」など。
「吾は天照大神(あまてらすおほみかみ)のいろせ(伊呂勢)なり」(『古事記』)。
「明日よりは二上山(ふたかみやま)をいろせ(弟世)と吾が見む」(万165)。
「阿治志貴高日子根神(あぢしきたかひこねのかみ)は……そのいろも(伊呂妹)高比賣命(たかひめのみこと)」(『古事記』)。
「沙本毘古王(さほひこのみこ)そのいろも(伊呂妹)に問ひて…」(『古事記』垂仁天皇)。
◎「いろは(生母)」
「いれをはは(入れ緒母)」。「いれ(入れ)」は「いり(入り)」の他動表現ではなく、客観的対象の自動表現。客観化された表現の間接性は敬いの現れ(つまり尊敬表現)。「を(緒)」に関しては「いも(妹)」の項参照(上記「いろ(同母)」と同じ)。「いれをはは(入れ緒母)→いろは」は、その「を」が入って入る母(はは)の意。つまり、生みの母、です。では、「を(緒)」の入っていない母はあるのかという疑問もありそうですが、直接に自分の「を(緒)」の入っていない母はあります(先祖たる母体です)。
「其の父(かぞ)母(いろは)の二(ふたはしらの)神、素戔嗚尊(すさのをのみこと)に…」(『日本書紀』)。
「天皇(すめらみこと)、大連(おほむらじ)に命(みことのり)して、女子(をみなご)を以(も)て皇女(ひめみこ)として、母(いろは)を以(も)て妃(みめ)とす」(『日本書紀』)。