原意は、入(はい)り発生する、ということですが(「たち(立ち)」は発生を表現することが原意です)、「AがBに入り立ち」はAがBに(Bの外部からBへ)入り、BにおいてBの存在として存在感を示す状態になることを意味します。「おほやけ所にいりたちする男」(『枕草子』)。「都にはまだいりたたぬ秋の気色」(『源氏物語』)。Bが事の場合、Bに精通したり深く関わったりすることも意味します。「いりたちたる魚鳥の名」(『八雲御抄(やくもみセウ)』(歌論書):詳しく知っている魚鳥の名。「魚鳥の名」がその人に入り発生感を生じています。これは、その人だけに発生し他にはあまりよく知られていない、とい意味にもなり、無知なその人に発生し経験のある人にはありきたりなことを珍し気に、という意味にもなります。ここでは、それは、若い人は特に、歌にするな、と言っています)。これの他動表現は「いれたて(入れ立て)」になりますが、他者を「いれたて」(入れ発生させ)の場合、出入りさせる、というような意味にもなりますが(「心わづらはしき北のいで来て後は、内にもいれたてず」(『枕草子』))、ものごとを「入れ立て」の場合、そのものごとを自分を入れ、発生させる、そのものごとを完成的に成立させる、その費用を負担したりそれによる損失を負担したりする、ことも意味します。「足駄・雪駄に至るまで、仕着せの外は身のいれたて」(『百日曽我』近松門左衛門)。