◎「いらひ(弄ひ)」(動詞)

「いらアイあひ(苛愛合ひ)」。いらいらした心情と何かを愛で愛する思いが合うこと。いらいらした心情を思わせ、同時に何かが気に入りこれを愛で続けるようにこれに触れ干渉し続けること。何かをいじくりまわす状態になります。一瞬触れたり干渉したりするのではなく、それが相当程度持続します。江戸時代の書には「いらふ」と「いぢる」が同意語のように書かれています。「人の具足見ること……手にてゆめゆめいらふべからず」(『今川大双紙』室町時代の武家故実書)。人を「いらふ」ことが、からかふ、や、いぢめる、を意味したりもします。また、施設のあちこちを「いらふ」ことがその施設の手入れや修理を意味したりもします。「次の間で鼻の先をゐらふて座敷へ出る」 (「洒落本」:これは、ただ触ったけではなく、汚れを取るなどして整えた)。

 

◎「いらへ(応答へ)」(動詞)

「いりあへ(入り合へ)」。(相手の思いや話に)入りそれに合わせた反応(特に、言語活動)をすること。無難な応答とでも言うような対応をします。「二人の子は情けなくていらへて止みぬ」(『伊勢物語』)。「折節のいらへ心得て」(『源氏物語』:その折々の当たり障りのない応答です)。

「いらへ」には、利息付きで借りること、を意味する「いらへ(借へ)」もありました(→3月25日)。