「いみみを(忌み廻緒)」。「を(緒)」は線状の長いものを意味します。「いみみを(忌み廻緒)→いも」は、忌みながら(注意深く警戒しながら)(その周囲を)廻(み)る(めぐる)長いもの、の意。これは山芋を表現しており、なぜ注意深く警戒しながらその周囲を廻(めぐ)るのかと言えば、誰もが、それを折らないように、掘りこぼしのないように、注意深く全体を掘り抜くからです。つまり、誰もがそうするもの、の意。後には里芋も、さらに相当後期にはジャガ芋や薩摩芋(さつまいも)も、「いも」と言われるようになります。「うも」とも言いますが、これは「うみを(熟み緒)」。「うみ」は「膿み」にもなっている言葉ですが、ぬるぬると熟した状態になっていることを表現し、これは山芋や里芋を言っています。「いもがら」は里芋の葉茎(またはそれを干したもの)。「芋名月(いもメイゲッ)」の「芋(いも)」は里芋。「芋粥(いもがゆ)」というものがありますが、これはヤマイモを薄く切ったものが入り、甘葛(あまづら)の汁で煮るそうです。甘そうです。サツマイモの伝来は、あまりはっきりしていませんが、16世紀最末期から17世紀最初期ころ、中国→沖縄方面から九州へ、という伝来経過をたどっているようです。私的に芋や苗を移動させる人もいるでしょうから、こういうことはあまり明確には分からないかもしれません。ジャガイモは16世紀最末期にオランダ人がもちこんだという説がある程度有力です(他にも説はあります)。「じゃがいも」の名に関しては、ジャガタラ(インドネシア・ジャカルタの古称)から伝わったからと一般に言われています。「じゃがたらいもをなにやらけもの(獣)かくじら(鯨)のあぶら(脂)にてさとう(砂糖)をまぜ煮つけたるものなり」(『西洋道中膝栗毛』)。「ジャガタライモ 馬鈴薯」(『物品識名』:19世紀初期の、本草の和漢名を対照した書)。