◎「いめ(夢)」
「いみえ(睡眠見え)」。「い」は睡眠を、眠っていることを、意味します(→「い(睡眠)」の項・10月(去年)11日)。「いみえ(睡眠見え)→いめ」は、睡眠中の見え、睡眠中に見えること。「あしびきの山来隔(きへな)りて遠けども心し行けば夢(伊米:いめ)に見えけり」(万3981:古代では自分が相手を深く思っていると相手の夢に自分が現れる、逆の立場では、相手が自分を思っていると相手が夢に現れる、という思いがあったようです。つまり、自分が夢になる。『古今集』の歌では「思ひつつ寝(ぬ)ればや人の見えつらん 夢と知りせばさめざらましを」。この場合は自分が思っている人が夢に現れています)。
「ゆめ(夢)」はこの語の「い」と「ゆ」の交替。
◎「いむさき」の語源
「いむさき」は「いまゆさき(今ゆ先)」。「ゆ」は経験経過を表現する助詞(→「ゆ(助)」の項)。この場合は時間的起点を意味します。「さき(先)」は過去を意味します(「さきつよ(先つ世):昔の世」)。未来は「のち(後)」と言います(「のちのよ (後の世)」)。つまり、「いまゆさき(今ゆ先)→いむさき」は、今より(時間的に)前・過去、以前、の意。「いむさきに」は、以前に。「いんさき」とも言います。「文は通ひけれど、いまだたいめ(対面)もせざりしいんさき、東に下りしとき…」(『六帖詠草(ロクデフエイサウ)』・江戸時代後期の歌集)。