◎「いまに」

「いまに(今に)」。「に」は (この場合は時間的)均質経過(N音は客観的な認了感・均質感を表現します)を表現する助詞。「いまに(今に)」は、「いま(今)」と時間的に均質なことを表現しますが、過去に、将来何かが起こることや起こっていることが終わることへの期待や予想がある場合、今(いま)その期待や予想どおりになっていない場合その思いを表現する意(A)や、将来、「いま(今)」が維持されている状態で、過去のことになった状態ではなく、今のこととして、の意(B)があります。

(A)「已(すで)に罰せらるべかりしを、いまに命助け置かれて」(『太平記』:いまでも命を助けおかれている)。「まま(乳母)もいまに恋ひ泣きはべる」(『源氏物語』)。

(B)「をのれ、いまにかはを(皮を)はいでくれふぞ」(「狂言記」)。「いまに見てをれ」。

 

◎「いまし」

「いまし(今し)」。「背向(そがひ)に寝(ね)しくいまし悔(くや)しも」(万3577:「寝しく」は「寝し」(「し」は過去の助動詞と言われるそれ)のク語法)などの「いまし」です。「いましく」などの表現から、あるとも言われているシク活用形容詞の「いまし」ではありません。「いまし」という表現です。「いま」は「今(いま)」ですが、この「し」は副助詞とも言われる「し」(→「し(助)」の項)であり、大いなる宇宙の意思としての必然性(それに出会っている感銘(下記A))、それゆえの(絶対に抗(あらが)うことができないがゆえの)どうしようもなさ(上記万3577)、それに抗(あらが)う願望の切なさ(下記B)、といったことを表現します。

(A)「木(こ)の暗(くれ)の繁(しげ)き尾(を)の上(へ)をほととぎす鳴きて越ゆなりいまし来(く)らしも」(万4305)。

(B)「月かさね吾が思ふ妹に逢へる夜はいまし七夜を継ぎこせぬかも」(万2057)。

この「し」は一般に、指示強調、と言われます。しかし、指示ではありません。強調と言えば強調なのですが、指示することによる強調でもなければ単純な強意主張でもありません(詳しくは「し(助)」の項)。

 

(おまけ)

◎「いまはし(忌まはし)」(形容詞シク活用)の語源

「いみはひあし(忌み這ひ悪し)」。忌みの情況感が生じ良くない。忌みが感じられ良くない。忌むべきことの不吉な予感なども生じ、爽やかな自由感が制限されたりなくなったりします。

◎「いまひ(忌まひ)」(動詞)の語源

「いみはひ(斎み・忌み這ひ)」。斎み・忌みの情況になること。忌みが感じられて避けたりします。「忌(いま)ふに忌(いま)はれぬ世のならひ」(「謡曲」)。