「いにへ(睡眠に経)」。「い(睡眠)」はその項(これは睡眠動態にあることを表現します・10月(去年)11日)。「に」は助詞。「いにへ(睡眠に経)→いね」は、睡眠を経過する動態にあること。眠ること。「大原の古(ふ)りにし里に妹(いも)をおきて我いねかねつ」(万2587:眠れない)。「万4351」にある「いのれども(伊努礼等母)」は「いねほれども(寝ね欲れども):眠りたいのだが」でしょう(つまり、この「いのれ」ないし「いぬれ」は「いね(寝ね)」の已然形ではないということ)。

「い」は睡眠動態にあることを表現し、非常に古い時代、それを活用語尾N音で表現した「いぬ(睡眠ぬ)」という動詞があり、眠れたことを「いにえ(睡眠に得)いね」、眠っていることを「いにへ(睡眠に経)いね」と表現することもあったのかもしれませんが、それは不明です。眠らないことを「いなず(睡眠なず)」と表現しているような資料はありません。

 

「ね(寝)」という動詞はこの「いね(寝ね)」の「い」が落ちたものですが、さらにそこに睡眠動態にあることを表現する「い」が加わった「いをね(睡眠を寝)」「いもね(睡眠も寝)」という表現もあります。