◎「いなだき(頂)」の語源

「いねうはでわき(い嶺上出分き)」。「ねうは」が「な」になり「でわ」が「だ」になっている。語頭の「い」は直線的進行感・連続感を表現します。「ね(嶺)」は山岳。「いね(い嶺):進行感・持続感のある嶺(ね)」は尾根。「うは(上)」は「でわき」を形容します。「でわき(出分き)」は出現して世界を分けるもの(分ける部分)の意。古くは四段活用の「わき(分き)」がありました。尾根の上で世界を分ける部分とは、山頂である。それは(少なくとももともとは)円錐状の山の頂きではなく、連続する尾根の頂き。つまり、意味は「いただき(頂)」とほとんど変わりません。「いなだきにきすめる玉は二つなしかにもかくにも君がまにまに」(万412:「きすむ」は手を触れずに大切に保存すること)。

◎「いなだき」(動詞)の語源

「いただき(頂)」(山の頂)と「いただき(頂き・戴き)」(いただき物)が同音であることから、その影響により、高く掲げて尊重の念や感謝の念を現しつつ受ける、というような意味で(山の)頂を表す「いなだき」が動詞としてもちいられたもの。「わがために漁(あさ)りし鮒をいなだきておとしもつけず食(を)しにけるかも」(良寛歌:「おとしもつけず」は、落ち着くこともせず、の意)。