「いつおとこ(稜威乙子)」。「いととこ」のような音(オン)を経つつ「と」が一音化した。この場合の「いつ(稜威)」は人間関係(血族・親族関係)における権威を意味します。その関係において、直接に同じ腹から(つまり同母で)生まれた関係ではなく、その母の姉妹から生まれていることにより権威関係に同母のような直接感がなくそこに遊離感(権威の弱まり)が生じている関係にある子(こ)が「いつおとこ(稜威乙子)→いとこ」。「おと(乙)」はその項参照(これは、原意的には、遊離感がある子孫を意味します)。これが母との関係だけではなく、父との関係でも言われるようになります。
「古記云 従父兄弟……俗云伊止古波良加良(俗に言う、いとこはらから)」(『令集解』(喪葬令):「従父兄弟」は中国語で父方の年上や年下のいとこ(男)を意味します。「いとこはらから」は「いつおとこ(稜威乙子) →いとこ」たるはらから(同胞)ということ)。
「いときも」という語もありました。「古記云……従父姉妹者……俗云伊止伎毛也」(『令集解』(喪葬令):「従父姉妹」は中国語で父方の年上や年下のいとこ(女)を意味します)。これは「いつおきいも(稜威置き妹)」。「おき(置き)」も遊離感を表現します。