◎「いと(幼少・年少)」
「いとを(甚小)」。非常に小さい。非常に幼い子を言います。発展的に、幼い子一般。さらには、大阪方面で、愛らしい娘→「いとはん」(「はん」は「さん(さま・様)」の方言的変化)。「いと姫君(ひめぎみ)」。「いと姫君、二つ三つばかりにておはしませば…」(『栄花物語』)。
◎「いときなし」(形容詞ク活用)
「いつおきなし(稜威置き無し)」。この場合の「いつ(稜威)」は社会や家庭での権威を意味します。「おき(置き)」は、「霜が置く」のような、自動表現。権威の置きがない、権威が置かれそれに配慮したりすることがない、ということなのですが、これが、そうしたことへの配慮など全くない、無邪気な、幼い子を意味します。「いとけなし」にも意味は似ています。
◎「いとけなし」(形容詞ク活用)
「いとけになし (幼少気似無し)」。「いと(幼少)」は非常に幼いことを意味します→上記。その「いと(幼少)」の「け(気)」であることに他に似たものが無い→非常に「いと(幼少)」だ、非常に「いと」の「け」だ、という表現。つまり、非常に幼い印象だ、ということです。「いときなし」に意味が似ています。「主上は今年三歳、いまだいとけなう在(まし)ましければ…」(『平家物語』)。