◎「いちじるし(著し)」(形容詞ク活用・後にシク活用)
「いちしるし(いち著し)」。「いち」は進行感を表現します(→「いち(市)」の日・12月28日にあるそれ)。これは程度に非常に進行感があること、それゆえの(極限へ行きつくような)突出感があること、を表現します。「しるし」は形容詞「しるし(著し)」(ク活用)。この形容詞「しるし(著し)」はそこに何かの「知られ」があることを表明し、「知られ」があることに突出感がある場合、知られていなかったことが知られたということの感銘がものごとの明瞭感、それをそれとして際立たせる明瞭感を表現し、明瞭にありありと、あるいは特定強調的に、何かが知られる、という意味になり(1)、その突出した完成感・特別感はその「知らせ」に霊的・神的な権威も感じさせ、それは、霊的・神的な知らせ、にも用いられます(2)。
この形容詞は古くは「いちしるし」と清音。また、もともとはク活用でしたが後にシク活用になります(3:このシク活用は、いちしるゆゆし、が、すなわち「いちしるし」にシク活用形容詞「ゆゆし(由由し)」が作用しているのかも知れません。つまり、由々(ゆゆ)しく(ク活用の)「いちしるし(著し)」だ、ということ)。
1.「最近は物価の乱高下がいちじるしい」。「あやにくにいちしるき顔つき」(『源氏物語』:本当の親に良く似た、本当の親が明瞭に知られる、顔つきを言っています。「あやにく」なのはそれにより密通が明瞭に知られるから。この例はク活用)。「いちしるからぬ(いちしるくあらぬ)人の声」(『枕草子』:良く知らない人の声。この例もク活用)。
2.「げにいちしるき神のしるしか」(『源氏物語』:この例もク活用)。
3.「入道もいちじるしき人にて…」(『源平盛衰記』:気性の突出や変化が激しい、というような意味。シク活用)。
◎「いちしろし(著し)」(形容詞ク活用)
「いちしりよし(いち知り良し)」。「いち」は進行感を表現する動詞「いつ」(→「いたり(至り)」の項)の連用形。「いち」の項参照。「いちしりよし(いち知り良し)」は「非常に、突出して、知り良い」「明瞭に表れている」の意。「(私が恋をしていると)いちしろく人の知るべく嘆きせむかも」(万3133)。