「いさを(勇男)」。「いさ(勇)」は「いさみ(勇み)」の語幹に同じ。躍動感があること。「を(男)」は男性たる人。「いさを(勇男)」は躍動感のある男。その躍動によりさまざまな実績も起こります。「是(こ)の両人(ふたり)は熊襲(くまそ)のいさをなり」(『日本書紀』景行天皇十二月)。

功績を「いさをし(勲)」と言い、「し」が省略され単に「いさを(勲)」とも言います。これは「いさをしり(勇者知り)」の「り」の脱落。それにより「いさを(勇者)」を知り人々も知る証(あかし)、の意。

「いさをし」というシク活用の形容詞もあります。これは「いさをををし(勇者雄雄し)」。まさに勇者(いさを)として雄々しい、の意。また、働きに躍動感がある、励(はげ)みがある、というような意味にもなります。「里坊(さとまち)の長(をさ)には、並(ならび)に里坊(さとまち)の百姓(おほみたから)の清正(いさぎよ)く強〓(いさを)しき者を取りて宛(あ)てよ」(『日本書紀』大化二年正月:〓は「朝」の「月」の部分が「夸」になった字ですが、PCの漢字セットにないようです。ちなみに、「〓」は昔、出版において、活字(鉛活字)が無い場合に入れたもので、通称「ゲタ(下駄)」と言います)。「上に対(むか)ひては好(この)みて下の過(あやまり)を説き、下に逢(あ)ひては上の失(あやまち)を誹謗(そし)る。其(そ)れ如此(これら)の人は皆、君(きみ)に忠(いさをしきこと)无(な)く、民(おほみたから)に仁(めぐみ) 无(な)し」(『日本書紀』推古天皇十二年四月:『十七条の憲法』六) 。

また、功績を意味する「いさをし(勲)」が形容詞のように作用することも影響し形容詞「いさをし」は、功績がある、という意味にもなります。「諸(もろもろ)の有功勲(いさをしき)者に恩勅(みことのり)して、顕(あきらか)に寵(めぐ)み賞(たまもの)す」(『日本書紀』天武天皇元年八月)。