「ゆささねなき・ゆささねなみ(揺さ種(核)な男・揺さ種(核)な女)」。「ゆ」は「い」に交替しました。「ゆさ(揺さ)」は動き出す動態を表現します。静止している構成が緩み(揺れ)、動き出します。発動です。「さね(種・核)」は動き・発動の根(ね・もと)を意味します。「な」は何かを認了します。「き」「み」はそれぞれ男・女を意味します。古代には男を「き」、女を「み」とする表現がありました→「おきな(翁)」「おみな(嫗)」→「き(男)」「み(女)」の項。「ゆささね(揺さ種(核))」は発動している根、発動の根(もと)、です。その発動している発動の根(もと)なる「男」と「女」が「いざなき・いざなみ」。この「いざ」は人の気持ちを湧き立たせ誘ったりする、「いざ鎌倉」などの、「いざ」と解され、相手を誘(いざな)って結婚してことによる名、などとも言われますが、この二神による後の「島生み」は男と女による生命の誕生によって現(あらは)されてをり、男と女が『いざ』『いざ』とそうしたことへ相手を誘うか疑問です(つまり、男と女がお互いに『いざ』『いざ』と言って性的関係へ入ったり結婚したりするか、ということです)。

これは神名です。表記は『古事記』では「伊邪邦岐命(いざなきのみこと)・伊邪邦美命(いざなみのみこと)」『日本書紀』では「伊奘諾尊・伊奘冉尊」。『日本書紀』の表記は漢字の古い音に由来するもの。『古事記』によれば、「天(あま)つ神(かみ)」(下記※)がこの二神に「諸(もろもろ)の命(みこと)」もち「この漂(ただよ)へる国(くに)を修(を)め理(つく)り固(かた)め成(な)せ(修理固成是多陀用弊流之国)」(これは一般に行われている読み)と詔(の)り、「ことよせ(言依せ・事依せ)」、その後、「天(あま)つ神(かみ)」から賜(たまは)った天(あめ)の沼矛(ぬほこ)を「ここををろろ」に畫(か)き鳴(な)して引き上げ塩がしたたり落ち島(「おのごろじま」)となり、その島で「国生み」が起こります。この「天(あま)つ神(かみ)」の詔(の)りは、壊(こわ)れているものをしっかりさせろ、とも聞こえますが、漢文の部分は、理(リ)を修(をさ)め、固(コ)に成せ(しっかりさせろ)、と言っています。つまり、この部分は「この漂(ただよ)へる国(くに)を理(ことわり)を修(をさ)め固(かた)め成(な)せ」とも読めます(「理」には「つくる(作る)」という意味はありません)。つまり、知的に完成させろ、「こと(言・事)」を完成させろ、ということです。そしてすべての発動源たる「いざなき・いざなみ」により「島生み」が起こります。

 

※     「天(あま)つ神(かみ)」とは、「天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)」・「高御産巣日神(たかみむすひのかみ)」・「神産巣日神(かみむすひのかみ)」・「宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこぢのかみ)」・「天之常立神(あめのとこたちのかみ)」です。