◎動詞「いからし」
「いかりあらはし(怒り現し)」の音変化。「いかららし」のような音(オン)を経、「ら」は一音化しました。怒りの情動が見た目にもありありとわかる状態になり、の意。怒り興奮しているように、という意味でも言います。「肩をいからし」。「声をいからし」という表現もありますが、「目を~」という表現が多いです。
「大蛇ありて目を発瞋(いからし)て墓より出で…」(『日本書紀』仁徳天皇五十五年:蝦夷(えみし)の騒擾制圧に向かった田道(たぢ:人名)という人が蝦夷に殺され、その後また騒擾があり蝦夷が田道の墓を暴(あば)いたところ、大蛇が現れたという話です)。
「いかり(怒り)」の使役型他動表現の「いからせ(怒らせ)」「いからし(怒らし)」という一般的表現はもちろん別にあります。
◎形容詞「いからし」(ク活用)
「いきあらし(息荒し)」。気性が激しいこと。物事(ものごと)の進展がはげしいことも言ったようです。「若くいからきやう(様)なる人」(『愚管抄』)。