「イきはもの(胃際物)」。「きは」が「か」になっているわけです。「「イ(胃)」は「胃」の音(オン)であり、「胃(イ)」は、いうまでもなく、消化器官。「イきはもの(胃際物)」は、胃(イ)の際物(きはもの)、の意。「きはもの(際物)」は、元来は、時期的に、一般性が無く、限界的で、ある限界を過ぎると売り物にならないようなもの、たとえば酉の市でしか売れない熊手、のようなものを言いましたが、それが意味的にも一般性が無く、限界にあり限界を超えそうなもの、を意味し、食べ物として一般性が無く、食べ物としての限界にあり、限界を超えそうなもの(食べ物ではなくなりそうなもの)を食べることを「いかものぐい(胃際物食ひ)」と言いました。そこから、意味に一般性がなくその意味を失いそうなもの・こと、つまり粗製な安物や偽物(にせもの)、を「いかもの」と言うようにもなりました。「怒物食 俗にいかものくひとて常人の食せざる物を食ひて人に誇る者あり」(『安斎随筆』・江戸時代後期)。「床の間に近寄り、偽物(いかもの)の山陽の半切を詠(なが)めつつ」(『当世書生気質』・明治時代)。
また、「いかし」(形ク)の語幹「いか(厳)」による「いかもの(厳物)」(威力・威圧・威風・威厳を感じるようなもの)という表現もあります。「いかものづくりの太刀」はいかめしい造(つく)りの太刀(粗製やまがもの造りの太刀という意味の「いかものづくりの太刀」もあったようです)。
「如何物」は「いかがなものか(如何なものか)」に影響された当て字。