「いきからづら(行き幹連)」。「き」は無音化し「から」のR音は退化し「か」になり「づら」のR音も退化し「だ」になっています。「から」は「から(幹・柄)」の項参照。これは棒を意味します。「いきからづら(行き幹連)」は、進行する棒の連なり、ということですが、何が進行するのかというと、棒自体です。すなわち、棒の移動であり、人として言えば、棒の移送・運搬です。進行する(運搬される)棒の連なったもの、それが「いかだ(筏)」。切り出した材木や竹などを、枝葉を去り、縦横に連体させ、これを水の自然流に浮かび流し運んだのです。進路調整のために人が乗ることもありますが、基本的な目的は浮かび流れているその木材などの運搬です。「檜(ひ)のつまで(檜(ひのき)の原木)を…宇治川(うぢがは)に…浮かべ流せれ(「ながし(流し)」と完了の助動詞「り」の已然形) そを取ると騒く御民(みたみ)も…水に浮きゐて…いづみの河に持ち越せる真木(まき)のつまで(原木)を…いかだ(五十日太)につくり のぼすらむ(献上せむと)…」(万50:「のぼせ」は「のぼり(登り)」の使役型他動表現であり、「のぼらせる」は都へ献上するという意味であり、物理的には筏は川を下るでしょう。助動詞「らむ」はその項参照)。