◎「い(射)」(動詞)

対象の進行が「い」の直線的進行感により表現されました。対象、特に矢、を直線的に進行させること、発射すること。直線的進行であり、目標感があります。この動詞は後世では矢に関し最も一般的に言われるようになりますが、弓矢が生まれる前は最も一般的には石に関し言われたでしょう。石を投げ撃(う)って獲物を獲(と)ったわけです。上一段活用。終止形「い」、未然形はたとえば「いず」、已然形はたとえば「いれども」。

 

◎「い(鋳)」(動詞)

 「ゆ(湯)」の動詞化。「ゆ」と「い」の交替。熱で溶解した金属を「ゆ(湯)」と表現し、「これをゆて(いて):「ゆて」は「ゆとへ(湯と経:湯の状態を経過し)」(湯(ゆ)の状態にして)という表現をした。意味は、金属を湯(ゆ)の状態に、溶解した状態に、すること(さらに加えて、それにより加工工作すること)。「鏡をいさせ」、「いがた(鋳型)」。上一段活用。ちなみに、中国語の「湯(中華人民共和国音、タン)」は基本的には(煎じ薬も含め)スープを意味し(→「タンメン(湯麺)」)、日本語で言う「ゆ」は意味しません。日本語の「ゆ(湯)」にあたる語は世界の他の言語に例はないと思います。英語では「hot water」と言います。「熱(あつ)い水」。中国語では「熱水」。これも熱い水。ぬるま湯は「温水」。

 

◎「い(沃)」(動詞)

雨(雨滴・水滴)の進行(落下)が直線的進行感を表現する「い」により表現されました。「い(射)」と同じような動詞なのですが、自動表現があります。「雨はいにいて」。水をかけたり浴びせたりすることも言います。「これを治(ヂ)せむ(治療する)やう(様:方法)は面(おもて)に水なむいるべき…」(『蜻蛉日記』)。上一段活用。