「あんぽんたん」は、 「アンハウオンとアン(暗、放音と暗)」。「ぽん」は連半濁も含めた連音による音変化。「アン」は「暗」の音(オン)であり、頭の中が暗い印象であること、物事や事情が分からないことを意味する。「ハウオンとアン(放音と暗)」とは、「暗」という漢字の音(オン)を放っている状態で暗(アン)だ(暗い)、という意味である。どういうことかというと、口を開いて「アーン」と言っているような状態で暗愚だ、ということである。漢字では「安本丹」と、薬の名のような書き方がされたりする。「扨(さて)もきついうっそりめ。汝(おのれ)がほんのあんぽん丹。付けう薬のない」(「浄瑠璃」)。

 

ついでに「あんぽつ」の語源

 「アンポウよつ(安保四つ)」。「アンポウ(安保)」は、安定して、安らかに、(客や乗り心地を)保(たも)つ、という表現。「よつ(四つ)」は「よつでかご(四つ手駕篭:四隅に竹の柱がある)」の語頭。四つ手駕篭は江戸時代の簡略な庶民用の駕籠です。「あんぽつ」はそれよりも作りが安定的で左右に畳表の垂れがついています(「四つ手」にもついています)。「あんぽつ」は「四つ手」よりも作りがしっかりしていて少し上級。ただしどちらも高級というほどのものではありません。どちらも庶民用の簡略な駕籠です。高級な駕籠とは、たとえば大名が乗って担がれるようなもの。「あんぽつ」は関西では「あんだ(あみいた・編み板)」と言いました(罪人や死体などを運ぶ竹編みの縁の付いた板もそう言います)。