「あはわ(淡輪)」。淡く(希薄で)、輪の(丸い)印象のもの、の意。内部に気体を包んだ液状物質の球状皮膜を言いますが、基本は水のそれです。仏教の無常観の影響もあるのでしょうが、「あわ(泡)」(とくに水の泡)は儚(はかな)いもの・ことや虚(むな)しいもの・ことの象徴としてよく現れます。「あわの消え入るやうにて、うせ給ひぬ」(『源氏物語』)。「朝に死に、夕に生るるならひ、ただ水のあわにぞ似たりける」(『方丈記』)。
驚愕し慌てふためいた状態になる「あわをくらふ(泡を食らふ)」、「あわをくふ(泡を食ふ)」という表現がありますが、これは「『あ』は『わ』をくらひ」(『あ』は『わ』、という事態を受け)ということでしょう、「わ」という驚きの発声があり、「あ」と気づき瞬時に「わ」になる事態、ということです。「あわをふかす(泡を吹かす)」(驚くめにあわせる)はそれを基としそれを「あわ(泡)」として表現したもの(「『あ』は『わ』」を言わせる、でもありますが)。