◎「あづけ(預け・関け)」
・「あてつけ(当て付け)」の音変化。「つけ(付け)」は何かが思念的に活性化することを表現する「つき(付き)」の他動表現ですが→「つき(付き・着き)」の項。この場合の、Aに「当て付け」、はAを目標としてこれに付けるわけではありません。ここで「あて(当て)」は何かを期待していたり何かの思惑をもっていたりする動態にあることを表現します→「あて(当て)」の項。「あてつけ(当て付け)→あづけ」は、何かを期待や思惑をもって何かに同動させること(何か、に、何かとして、思念的に活性化させること)。たとえばAがBにCを「あづけ」た場合、CはB に同動しますが、BはCに関しAの期待や思惑の影響拘束下にありCを自由に処分することはできません。もちろん所有権を得ることはありません。「金を銀行にあづけ」。
・「A(ものごと)にあてつけ(当て付け)→A(ものごと)にあづけ・」は、ある期待や思惑をもってものごとに同動させ、ということであり、「A(ものごと)に関与させ・かかわらせ」のような意味になります。この場合の「つけ(付け)」は、「その問題について(つきて:関して)論じる」などという場合の「つき(付き)」の他動表現であり、かかわらせ、の意味になります。「春宮の女御の御方(おほんかた)の花の賀に召しあづけられたりけるに」(『伊勢物語』:かかわらせられた。参加させられた)。「人事に関(あづ)けてたやすく高下を爲す」(人事にかかわらせ、つまり、かかわって)。「家(いへ)に預(あづ)けたりつる人」(『土佐日記』最終部分:家にかかわらせた人。この場合の「家(いへ)」は居住・生活たるものごとを意味し、建造物たるものを意味しているわけではありません)。この用い方の「あづけ(予け)」が自動表現となった「あづかり(与かり)」はなにごとかにかかわっていることを表現します。
◎「あづかり(預かり)」
「あづけ(預け)」の自動表現。「あづけ (預け)」の活用語尾がA音化・情況化しそうした情況にあることが表現されています。預けられている情況になること。Aをあづかり、と言った場合「を」は状態を表現します(→「を(助)」の項)。「金をあづかる」。
◎「あづかり (与かり)」
「あづけ(預け・予け)」が「A(ものごと)にあづけ(あてつけ(当て付け))」のような用い方がなされる場合、それは、「A(ものごと)に関与させ」のような意味となり(→上記「あづけ(預け・予け)」の項)。その自動表現「あづかり(予かり)」は、何かにかかわっていること、何かや何事かの影響を受けていること、何かや何事かの影響下にあること、を意味します。「お褒(ほ)めにあづかり光栄です」は心地よい影響下にありますが、「物の怪(け)にあづかり」といった表現もあります。「謀反の事にあづかり」(『続日本紀』:謀反にかかわり)。「あづかり知らぬ」は、かかわっていない。