「あえかかり(肖えかかり)」。「え」が前音後音の母音の影響により「や」になっています。「あえ(肖え)」は『音語源』や以前の投稿(2018.10.09)のその項。動詞「かかり(懸かり・掛かり・罹り)」は、「かけ(懸け)」の自動表現ですが、何かに交感を生じさせた情況になることを表現します。Aに「あえかかり」は、自分を何か(A)に肖(あ)える(自分を何か(A)に該当させる、自分を何か(A)にする)という関係的交感を生じた情況になることを表現します。影響される、という意味にもなります(疫病が感染する、という意味にも)。「風はやみ峰のくず葉のともすればあやかりやすき人の心か」(動揺し影響を受けやすい人の心)。「その法師にあやからうとて西塔の武蔵坊とは名のりける…」。
「人の気を取って、うつけのやうにあやかりになすことか」の「あやかり」は「あやかし」(舟幽霊)と同じ意味のそれであり、亡霊→腑抜け、のような意味で言われます。