全的完成感を表現する「あ」による動詞です。他に対し(自己の)全的完成感を働きかけること。すなわち自己を維持し、その全的完成感を失わせようとする力に対しては失うまいと堪(こら)えます。動詞連用形に付きたとえば「守り敢へ」と言った場合、守りその全的完成感を維持しました。つまり守りぬいた。「あへなく」は、「敢へ無く」、すなわち、堪(こら)え自己の完全性を維持する事なく(維持できず)。「あへて(敢へて)」は、自己を完全に維持して、自己を維持する努力をして、の意。「とりあへず(取り敢へず)」は、情況を取る(自分のものにする)ことが不完全なままに(→「とりあへずビール」)。「あへなむ」はそうではないという力が働きつつもそれは維持されるだろう(維持しよう)ということ。「小さきはあへなむ」(小さいもの(子供)は許される)。この文末の「~なむ」には幾種類かありますが(→『音語源』「なむ」の項)、この「なむ」は「あへ(敢へ)」に完了の助動詞「ぬ」がつきそれが意思・推量の助動詞「む」によってA音化しているものです。つまり、客観的な認了感と意思・推量・推想感が融合的に表現されている表現です。確か感のある推量とでもいうものでしょうか。