「アビばずれ(阿鼻場擦れ)」。「アビ(阿鼻)」は、「あびきょうかん・アビケウクヮン(阿鼻叫喚)」のそれですが、「無間(ムケン):絶え間ない」と訳されるサンスクリット語。仏教では地獄は幾種類も(幾層も)あります。「阿鼻地獄(アビヂゴク)」はその中でも最もひどい状態の怖ろしいところらしい。「ずれ」は「すれ(擦れ)」の連濁ですが、ある環境の中で擦過し、変形し、その環境に応じ変形・変質し適応・順応している状態であることを表現します(→「世間ずれ」)。「アビばずれ(阿鼻場擦れ)」は、阿鼻(地獄)のような場、環境的劣悪さ極悪さ汚さ、になれ、適応しているような者、の意。「地獄ずれ」のような表現です。これは元来、男を言いましたが、後には女も、そして女に特化し、言うようになります。女に特化して言われるようになるのは、「あばずれ」た状態になった場合、女の方が衝撃が深く印象が強く残るからということでしょうか。「皆それぞれにわるい事は、おぼえよく。……播州から備中の宮内へたたきまはる時分には、もう悪(あば)ずれになり…」。