「あなにいやはし(あなに彌愛し)」。「あな」は呆れたような驚きを表現します(→『音語源』「あな」の項)。「に」は助詞。「いや」は動態や情況の進行への驚嘆を表現します。「いやましに(ますます程度が進んで)」などという「いや」です(→『音語源』「いや(彌)」の項)。「はし(愛し)」は感嘆のため息・吐息がでるような心情の表明。この「は」感嘆の長いため息・吐息です(→「はし(愛し)」の項)。「あなにいやはし(あなに彌愛し)」は「あな」と呆れ驚くほどいやましに愛(は)し、ということであり、限りない感嘆が表明されています。これは『古事記』における「いざなき」「いざなみ」の「国生み」の際に両者によって言われる言葉にある表現なのですが、『古事記』にある原文は「~えをとこを(え男を)」や「~えをとめを(え女を)」と続きます。この場合の「え」は「えも言われぬ」のそれのように、驚き・驚嘆を表現します。つまり「えをとこ」「えをとめ」は驚嘆すべき、それほどにすばらしく美しい、男と女ということです。文末の「を」はある状態にあることを表現し(→「を(助)」の項)、~だ、のように、感動・感銘を表現します。