「あぢはひ(味はひ)」から独立した語。感覚反芻される感覚、その記憶感覚。
「あぢはひ(味はひ)」(動詞)は「あとおひいひはひ(後追ひ言ひ這ひ)」。「とおひいひ」が「ぢ」の一音になっています。「あとおひいひ(後追ひ言ひ)」とは、ある対象があり(その対象は物とは限りません。事(こと)であることもあり、言葉(言語表現)であることもあります)、その対象から何らかの感受を受けた場合、その受けた感受に、さらにその後を追って感受される(効果が生じる)その感受の(効果の)豊かさや深みたるその感受(効果)です。それが生じることが「あとおひいひはひ(後追ひ言ひ這ひ)→あぢはひ」。感覚反芻が生じること、とでも言うようなことです。「Aをあぢはふ」と言った場合、助詞「を」は、目的ではなく、状態を表現しますが、味はひを生じているそれが対象化すれば「あぢはふ」は対象へ働きかける動態を表現することになります(→※『音語源』「を(助)」の項)。それによる感覚内容が「あぢ(味)」として独立します。この「あぢ(味)」は、人の生存に不可欠な最も基本的な感覚、すなわち、食ふこと、に関しもっとも一般的に言われますが、それに関してのみ言われるわけではありません。言葉の原意としては、感覚一般に関し言われます。歴史的には「理をあぢはふ」といった表現もあります。どのような場面でどのように「あぢ(味)」という言葉が使われているかはみなさんの日常的な経験で確認してください。
※『音語源』のあるサイト http://kaitahito.world.coocan.jp/