「あきねいひあひ(飽き値言ひ合ひ)」の音変化。「ねいひあ」が「にあ」のような音(オン)を経つつ「な」になっています。「あきねいひあひ(飽き値言ひ合ひ)」は、双方が何かの、もうそれでいい、と飽き足りる(充足する)値を言い合うこと。何のためにそうするのかと言えば、自分が持っている何かと相手が持っている何かを交換するためです。それにより何かと何かの交換比率も決まります。つまり「あきなひ(商ひ)」は交換努力をすること。それを行う人を「あきびと(商人)」とも言います。ちなみに「ね(値)」とは対象の、そして対象相互の「ね(音:響き)」であり、影響であり、対象(商品)相互に現れる相互的相関的影響です。その影響結果は交換比率となって現れます。「あきなひ(商ひ)は当初は物と物とが交換され、その「ね(値)」が貨幣単位で表現されていたりしたわけではありませんが、やがて、何とでも交換できるもの(通常は金属片)を利用して交換が行われるようになり、その「ね(値)」の影響規模は貨幣単位で数量的に表現されるようになります(→「ねダン(値段)」)。つまり貨幣との交換、貨幣による売買です。その結果、売買の努力をすることも「あきなひ(商ひ)」と言います。
ちなみに、「ねダン(値段)」という言葉は「 値談(ねダン)」から生まれたものでしょう。値(ね)について(とりわけ言語的に)やりとりすることです。江戸時代のものに「たまたま辻かごにものりたる事あれども、ねだんしたる事なし」という表現があります。これは値(ね)について、駕籠(かご)賃について、駕籠かきといろいろとやりとりしたわけです。「値段 (ねダン)」は「値談(ねダン)」と同音であることに影響され、値(ね)のレベル、という意味で、生まれた表現でしょう。「値談」は「直談」とも書きます。直(あたひ)に関するやりとりということです。