「あはき(淡黄)」。「は」の無音化。世界が(草木が)淡く黄色に変わっていく季節。季節の一つの名。古くは「ふみづき(文月:七月)」「はづき(葉月:八月)」「ながつき(長月)」が秋だったようですが(七夕(たなばた)の歌は秋の歌に分類されています)、暦の変更などもあり(1872(明治5)年にその年の12月3日を(1873年の)1月1日とすることが行われました)、21世紀には、形式的には、9月・10月・11月が秋でしょう。「野辺見ればなでしこの花咲きにけり我が待つ秋は近づくらしも」(万1972)。

『万葉集』に「可流羽須波 田廬乃毛等爾 吾兄子者 二布夫爾咲而 立麻為見」(3817)という歌があります。内容から、これも秋の歌です。「可流羽須波 田廬(たぶせ:農繁期に寝泊まりしたりする田のそばに建てた小屋)のもとに 我が兄子(せこ)は にふぶに笑みて(うれしそうに微笑んで) 立ちませり見ゆ(「立ちませり」は「立ち」の尊敬表現)」ということなのですが、問題は「可流羽須波」です。これは一般に「かるうすは(柄臼は)」と読まれているのですが(小屋のそばに臼があるということです)、これは「かるはすは(刈るはすは)」です。「すは」は「すは一大事」などというそれです。若い夫が見渡す限り豊かに実った田を見渡し、さあ、これを刈らねばならない、大変だ、とほほ笑んでいるのです。若い妻(この歌を歌った人:『万葉集』に書かれている「河村王」はただ詠唱しているだけです)がその顔を横で見上げています。幸福そうに。これは『万葉集』の中でも名歌の一つです。