受け持っている生徒に、文学好きな女の子がいて、その子におもしろい本をいろいろ紹介してもらいました。

第一弾は…


伊坂幸太郎『重力ピエロ』


中身についての感想はひとまず措いておくとして…


大学時代はほとんど文学作品には触れていませんでした。
同じく人文科学に分類される歴史関係の本が中心でしたね。
ま、当時は歴史学は社会科学だと信じて疑っていませんでしたが。

振り返ってみると、本格的に文学作品に触れたのは、高校の現代文の授業で『こころ』を読んだのを除けば、ほとんど小学校以来だったと思う。

小学校のころは、本当にたくさん本を読んだ。
ズッコケシリーズからガンバの冒険まで、推理モノやファンタジー、児童文学ばかりだけれど、本当によく読んだと思う。
なんでそんなに本を読んでいたのかはわからないけど、一つだけ確かなのは、小学校二年生のときに江戸川乱歩を叔父に買ってもらってはまったこと。
いわゆる怪人二十面相シリーズですね。
以来駄々こねて本を買ってもらったような気がします。

でもこれ、本当に叔父と親とに感謝しなくてはと思います。
自分の日本語力の基礎はこれでついたな、と。



逆に言うと、自分の日本語力は、小学校六年生でストップしたままなのかもしれない、とも思うのです。



これを感じたのが『重力ピエロ』を読んだとき。
おもしろいんですよ。
話の中身も理解できるんですよ。
伊坂の知性や知識に驚かされたり、様々な伏線のつながりに感心したり、人の感情の描写に感動したりすることもできるんですよ。
だけど、こういった作品を評価する言葉を、私は知らないのです。
「おもしろい」という言葉しか、知らないんです。


どう「おもしろい」のかを、うまく説明できない。
ストーリーを説明しても何の意味もないわけですよね。
もちろんストーリーを楽しめればそれでよいのかもしれないし、(おもしろくない国語の授業のような)過度の文芸批評は他人の文章を切り刻んで無味乾燥なものにしているだけなのかもしれない。


それでも、私は、この本を読んで自分が感じたことをうまく日本語で表現できなかったことに、悔しさと焦りを感じました。


自分の教え子には負けていられません。
自分の感性を磨くためにも、そして自分の教育活動に活かしていくためにも、文学作品に再びチャレンジしていこうと思いました。