外務省訳:かつての敵、今日の友
「かつての敵」をa late enemy と英語で表現するのだろうか。私はこうした表現を見たことはないのだが。そもそも英語の原文がおかしい。late を名詞の前につけると「最近の」という意味であり、人の前につけると「故」となる。このlate の奇妙な使い方は後にも出てくる。
ここは、Enemy Yesterday, Friend Todayか、Enemy in the Past, Friend in the Presentくらいの方が良いのでは。Present を「今日の」と訳すのも変である。日本のことわざ、「今日の友は明日の敵」にこだわりすぎたのかもしれない。
Ladies and gentlemen, in the gallery today is Lt. Gen.Lawrence Snowden.
Seventy years ago in February, he landed on Iōtō, or theisland of Iwo Jima, as a captain in command of a company.
外務省訳:みなさま、いまギャラリーに、ローレンス・スノーデン海兵隊中将がお座りです。70年前の2月、23歳の海兵隊大尉として中隊を率い、硫黄島に上陸した方です。
「海兵隊中将」とあるが、「海兵隊」にあたるMarine がない。勝手に付け加えたのであろう。「23歳の」とあるが、これも勝手に追加したようである。captain は「大尉」でいいが、a company は「中隊」なので、「中隊を率いた大尉として」となる。
In recent years, General Snowden has often participatedin the memorial services held jointly by Japan and the U.S. on Iōtō.
外務省訳:近年、中将は、硫黄島で開く日米合同の慰霊祭にしばしば参加してこられました。
He said, and I quote, “We didn’t and don’t go to Iwo Jimato celebrate victory, but for the solemn purpose to pay tribute to and honorthose who lost their lives on both sides.”
外務省訳:こう、仰っています。
「硫黄島には、勝利を祝うため行ったのではない、行っているのでもない。その厳かなる目的は、双方の戦死者を追悼し、栄誉を称えることだ」。
「彼は以下のように語っており、その言葉を引用します」といっている。
Next to General. Snowden sits Diet Member YoshitakaShindo, who is a former member of my Cabinet. His grandfather, GeneralTadamichi Kuribayashi, whose valor we remember even today, was the commander ofthe Japanese garrison during the Battle of Iwo Jima.
外務省訳:もうおひとかた、中将の隣にいるのは、新藤義孝国会議員。かつて私の内閣で閣僚を務めた方ですが、この方のお祖父さんこそ、勇猛がいまに伝わる栗林忠道大将・硫黄島守備隊司令官でした。
General. Snowdenをまた名前を外して「中将」と訳している。the commander of the Japanese garrison during the Battleof Iwo Jimaとあるので、「硫黄島の戦闘期における日本守備隊指令官」となる。
Enemies that had fought each other so fiercely havebecome friends bonded in spirit.
To General Snowden, I say that I pay tribute to yourefforts for reconciliation. Thank you so very much.
外務省訳:これを歴史の奇跡と呼ばずして、何をそう呼ぶべきでしょう。
熾烈に戦い合った敵は、心の紐帯が結ぶ友になりました。スノーデン中将、和解の努力を尊く思います。ほんとうに、ありがとうございました。
普通なら、「これを歴史の奇跡と呼ばずして、何をそう呼ぶべきでしょう。」ではなく、「これを歴史の奇跡と呼ばずして、何と呼べばいいのでしょうか」だろう。