そっと触れた唇から舌が伸びぬるりと侵入する。
私はそれに舌を絡めて捕まえる。
いつの間にか手が胸をなでていて、期待通りの展開に
私は吐息をついて彼の首に腕を回す。

そんな順序立てて思い出したわけではないが
傾きかけた陽射しや埃っぽい放課後の空気のせいで
感覚はリアルだった。
ただし、目の前に居るのは杜松である。

「何かいいことありましたか?」
頭が真っ白になってしどろもどろの私に杜松がほほ笑みかける。
騒がしい教室で静かに授業を進めていくこの教師の柔和な表情を初めて見た。
「いえ、何も。」
「そうですか」
杜松は頷くような会釈をして私を追い越した。
昨日のことはなかったことにしてくれたんだろうか。
それならそれでいい。これで私も友人を裏切ったなんて事実を
すっかり忘れてしまっても大丈夫。
私は長い溜息を吐いた。