三日坊主とは言わせません。五右衛門です。

 

 今日は珍しく前回の予告通り、タイトルではわざとぼかしましたが、ラブライブとCGの関係についていろいろと語りたいと思います。知らんから勝手にやってろ俺は帰ると思ったそこのあなたちょっと待ってください。ラブライブのストーリーなどについてはほとんど踏み込まないので、あくまでも一例としてあげたと思ってください。

 

 さて、まずはアニメにおけるCGについての話です。僕が生まれるずっと前から会ったアニメーションという文化は、手描きによって始まりました。といっても、実はアニメーションというとコマ撮り全般のことを指すこともあるので、スターウォーズのヨーダみたいな人形を動かすストップモーションもアニメーションに含まれます。それも面白い歴史があるので語りたいですが、それはまた今度機会があればにしましょう。今すぐ知りたいという方はゴーモーションで調べてください。でもブログは読んでってください。

 

 古いアニメーションで有名な作品と言えば、やはりミッキーマウスやシンデレラなどのディズニーアニメーションでしょうか。今考えるとぬるぬる動いてていい意味で恐ろしいです。当時のディズニーの高い技術が窺い知れます。さてそのディズニーですが、CGアニメを語る上で絶対に忘れてはいけない偉業があります。劇場用長編映画としては初のフル3DCGアニメーションでつくられた、トイストーリーについてです。

 

 実際の所初めてCGを使った映画はこれまたディズニーの「トロン」なんですが、あの映画では実際CGは15分程度しか使われていません。それでも200カットを超えますし最初というのはどこまでも偉大ですがね。

 

 トイストーリーを見たことがある人はおおいので、当作品についてはあまり語りません。重要なのは、それからアニメーションにCGを使う研究が進み、文化的にも定着したことです。上述のトロンなんて、「コンピューターでつくった映像は卑怯」だなんてトンチキな理由でアカデミーを逃しています。トイストーリーが創られたのはそれからたった13年後の話なんで、時代の流れは速いとしか言えませんね……。ちなみにかなり後に作られた続編の『トロン:レガシー』は普通にアカデミーを逃してます。南無。

 

 そこから説明を大分すっとばして、日本の深夜アニメに話は写ります。日本でもフルなり一部なりCGアニメーションは多く作られました。2000年代で有名なのはトランスフォーマービーストウォーズやSDガンダムなどですね。一部のみ使っているものの使用方法としては、よく使われるのは通行人や自動車などです。CGもモデリングやレンダリングの手間があるので手軽とは言えませんが、使い回しが出来るというのは非常に便利でしょう。

 

 そして2010年代後半、CGアニメーションはクオリティをどんどん上げ、その存在感をどんどん増していきます。Orange(代表作『宝石の国』『BEASTARS』)やIrodori(代表作『けものフレンズ』『ケムリクサ』)など、CGアニメを専門として作るスタジオの出現、プリパラなど女児向けアニメのダンスシーンでの使用、最近ではジブリがフル3DCGの映画を作るなんて話題です。20年代になりますが。

 

 そして、ラブライブです。かのアニメは2011年にプロジェクトを開始し、先ほども書いた「ライブシーンなど特定のシーンをCGで行う」技術、というか概念を作り上げました。それより少し前に放送されたアイドルマスターはダンスシーンのほとんどが手描きです。それはそれで怖い。

 

 というわけで、問題のラブライブ初のMVを貼ります。公式映像なんで安心して見てください。

 

 

 どう言っても怒られるような気がするんでぼやかして言いますが、時代を感じさせますね。

 

 これが初(かはどうかは正直分かりません)なのは、当時の技術が未発達だった、あるいは監督が気に入るクオリティでは無かったと推測するのが妥当だと思います。そんな中、制作のサンライズはCGを使うことを決意しました。後々の展開を考えると、先だって自分たちで技術を確立しようとしていたのだと思います。サンライズはそれまでガンダムUCなどである程度の技術を持っていたので、そちらから来る自信の方が大きかったのかもしれません。

 

 そしてラブライブシリーズは、上の動画のようにライブシーンのなかで人数が多いカットや引きのカットなどでCGを使うスタイルを続けました。シリーズ2作目の劇場版までは。

 

 下の動画(毎度言いますが、公式です。)の1本目はその劇場版の冒頭映像です。2分からライブシーンが始まりますので、内容に興味が無い人はそこから再生してください。

 

 気に入ったのなら2本目の動画もご覧ください。今度は挿入歌なので、最初から最後までライブシーンです。

 

 

 衝撃でした。劇場で見たときの僕の驚きを文字に起こすなら「?!???!?!??!?」ぐらいですかね。少なくとも目をひん剥いて銀幕を見つめてました。時間で言うと2分26秒をはじめとするカット、それが手描きなのかCGなのか一瞬判断がつかなかったんです。CGの特徴は一瞬のビジュアルだけでなく動きもあるのですぐにどちらか分かるんですが、『一瞬』分からなかった。その事が衝撃だったんです。

 

 一目で違いが分かるものと、一瞬でも人の目をだませるもの。これらの違いは絶大です。そんなこと無いだろと思ったあなたは「不気味の谷」で調べてみてください。別にホラー映画とかでは無いただの学問的な用語なので安心して調べられます。若干意味合いは違いますが似たような現象がこのMVにも起きています。その谷をついに超えたことを分かった僕は、こう思いました。

 

 「ああ、ついにCGもここまで手描きに近づいたんだな」と。

 

 これが大きな間違いだったんです。

 

 そもそも、手描きという長い年月をかけて完成された技術を前にCGを使う意味はどこにあるのか。その一つは先ほども上げた利便性。車や名前の無い通行人なら、別の話に出てもほとんどの人は気づきませんし、なんなら同じスタジオの別の話に流用したって問題ありません。

 

 ですが、ラブライブの場合、一話ごとどころか曲が変わるたびに違うモデルを起用する必要があるので、その意味はほとんど無いでしょう。関節や動きのクセなどは流用できるでしょうが、モデル作成の分逆に手間がかかっている可能性すらあります。じゃあラブライブでCGを使う意義とは何か。

 

 ここでもう一つの利点。「映像クオリティの均一化」です。一番最初に上げたMVと先ほど上げた二つのMVですが、作画のクセがかなり違うのは明白です。なぜか。当然、書いている人間が違うからです。現在のアニメーションでは、キャラクターのビジュアルはキャラクターデザインという役職の人間が行うのが主流です。これらの違いが起こる原因はその役職が変わったからこそ起こる変化であり、少し前まではそれが常識でした。

 

 そして、ライブシーンは一人で作る訳ではありません。ごく稀にたった一人で原画を全て描く狂人じみた能力を持つ方もいますが、そこはここでは割愛。特殊すぎる例です。つまり、何人かで作画を分担する以上、完璧に同じ作画は作れない訳です。

 

ちょっと前に、エガオノダイカというSFアニメがありました。ガンダムなどのように巨大メカを人が操る世界での戦争を描いた作品でしたが、このアニメ割と作画崩壊(画の質が低いこと)で有名で、僕も見ていたんですがCGで描かれていたメカ戦のカットに入るたびに安心していた節がありました。そもそも画が固定されているCGに作画崩壊はあり得ませんからね。

 

 というわけで、サンライズがCGによるライブシーンを採用したのは作画の安定化による作品全体のクオリティの底上げにあったわけです。

 

 

 と、思ってたんですけどね。

 

 

 全然違いました。もう完全に間違いでした。劇場版をみてそう考えた当時の自分を殴りたいぐらいです。当然、今上げた理由も一因であることは間違いないのでしょうが、それが一番と考えるのは傲慢もいいところだと思い知らされました。このMVで。

 

 

 

 これはシリーズの2作目、ラブライブサンシャインに登場するライバルグループSaint Snowの初シングルに挿入されているMVです。彼女らの来歴は今は置いておいて、こちらのMV、ほぼ全てのシーンがCGを使って作られています。冒頭の数カットや中盤の1カットを除いて、全て。最近あった、ゲームに使用したモデルを使ったりした訳では無く、まるで手描きから成り代わったかのようにCGが使用されています。

 

 僕は、このMVを、サンライズが発したCGの手描きアニメに対する勝利宣言だと捉えました。つまり、このMVを作るにおいてもう手描きは必要無いという判断を下した訳です。それまで、ぼくがCGを見て技術力を評価(というと偉そうですが、ようは感想です)する際、その基準はどれだけ手描きに近づいているかでした。その幻想をサンライズは打ち砕いた訳です。

 

 要するところ、3DCGはそのクオリティを手描きに近づける段階を既に超え、独自の表現力を追い求める段階にはいりました。ある意味では先輩であった手描きアニメの代わりでは無く、お互いの利点欠点で平等に競い合う環境を作れるようになったのです。もはや同列の存在です。

 

 果たしてサンライズがラブライブというプロジェクトを始めた時点で、この状況を考えていたかは分かりません。ですが、遅くとも僕が度肝をぬかれたサンシャインの劇場版を制作する段階では既にこの構想はスタッフ内で共有されていたことは想像に難くありません。

 

 今までCGアニメと言えば、ディズニーやイルミネーション、ドリームワークスなど海外の技術ばかりが先行して日本でそれが目立つことはありませんでした。しかし、もうその時代はサンライズの手によって終わりを告げます。この競争に日本も参入し、そして圧倒的な存在感を示せる日が近づいている訳です。

 

 その歴史を一人のラブライブファンとして、特等席で見られることをうれしく思います。

 

 このブログを見たあなたも、この大きな歴史の転換点に注目することをおすすめします。

ここまで読んでくれてありがとうございました。