☆☆★★★

 

2019年作品。

あまりひねりがないというか、それほど面白くはなかった。

9月なので9月の映画を観ようと思って、予備知識なしで観ました。SFラブロマンス?タイムパラドックスもの?

芸術家とその卵達が集まるアパート、というよりもアパルトメントと西洋風に言った方が良さそうなオシャレな賃貸物件に引っ越してきた志織はカメラが趣味。クセのある入居者達と一騒動あるのかと思いきや、そんな事もなく。浜野謙太がやらかしてくれるのかと期待したが、そんな事もなく。人付き合いの悪そうな平野だけが、最初からちょっと引っかかる感じではあったけど。

ネタバレいきます。

9月14日午後9時、部屋で寛いでいた志織は、突然何者かに話しかけられる。驚く志織だが、どうやらつないでいないエアコンのダクトから聞こえてくるらしい。声の主は「1年後の平野」。彼は自分を監視するように彼女に頼む。1年後の世界と部屋が繋がっているなんて信じられない志織だが、声の主が言い当てる「これから起こるニュース」に、志織も信じざるを得なくなり、平野を尾行する。時々、不思議な行動をする平野だが、特に変わった様子はなく、志織は尾行の理由を問いただすが平野は答えようとせず、業を煮やした志織に「明日だけは絶対に『ぼく』から目を離さないでください。明日が過ぎたら、理由をお話しします」と告げる。問題の『翌日』、志織は風邪を引いて熱を出してしまったが、約束通り、平野を尾行する。午後3時、違和感を感じた志織だが尾行を続け、夜に帰宅。すると、部屋は空き巣被害に遭っていた。風邪と心労が相まって倒れる志織だが、彼女を開放したのはたまたまエアコンを付けた事を咎められた平野だった(志織は、エアコンでダクトを塞いだら、もう会話ができないのではないか、と思ったらしい)。これをきっかけに「1年後の平野」の正体を突き止めようとする志織だが、それは自分ではない他の誰かではないかと言う平野。さらに志織の部屋を荒らしたのは、ただの空き巣ではなく強盗殺人犯だったと警察に告げられる。もしあの日、風邪で部屋に志織が居たなら、強盗に出くわして命を落としていたかもしれない。「1年後の平野」はそれを知っていて志織を救うべく一計を案じたのだと。心当たりがあるとすれば、別れた元彼くらいだという志織に平野は元彼の所在を探すように協力する。奇しくも元彼はアパートのオーナーの孫で、海外留学を終えて帰国していた。しかし、どうやら声の主は元彼ではなかったらしい。では一体誰が?

声の主は、志織が殺される世界線(時間軸)を体験することで、彼女を救おうと時間を越えた。志織が助かってしまうと、それは「起きたはずの結果」が変えられたことになり、矛盾が生じる。この時、考えられる現象は

1.時間が間違いを正そうとする

2.志織が死んだ世界とは異なる平行世界が生まれる

3.何も起こらない

結論から言うと、9月27日に殺されたはずの志織を助けてしまった現在の時間軸では、1年後の9月14日から27日かけて志織に呼びかける存在が現れなければ1年前の9月27日に志織は殺されてしまう。この矛盾を正すには、この事実を知っている者がその役を担わなければならない。すなわち、平野である。矛盾によって作られてしまったストーリーを遂行しなければならないというのも、時間に縛られていると言うことでもあるんだけど。矛盾が起きてしまったストーリーに矛盾を発生させないためには「その行動」が必要になるという、摩訶不思議な現象。これもまた時間の奴隷と言ってもいいのでしょう。

ただ、アパートのオーナーの持論で「人が部屋を選ぶのではなく、部屋が人を選ぶ」のだそうなので、平野が志織の部屋のエアコンダクトに語りかけるには志織の部屋に引っ越さなければならない(1年後の志織は転勤してアパートにはいない)。引っ越しの条件が「いつまでも卵ではなく小説家になること」という事で、平野は頑張って見事に受賞して小説家の仲間入りをして部屋の鍵を手に入れ、無事に志織に話しかけることが出来て、1年前の再現となる。で。お互いに心を通わせあってハッピーエンド。

 

期待した紆余曲折もなく、多分そうなんだろうなぁとイメージ通りに進んでしまって、私としてはイマイチな展開でした。

タイムパラドックスものって難しいよね。懲りすぎるとわけわかんなくなるし、ひねりすぎるとそこにも矛盾が出るし、どっちにしてもご都合主義にならざるを得ないのは仕方がないのかな。

主演の川口春奈は可愛かったし、高橋一生も良い演技をしていたので、そこは満足でした。

原作は小説とのこと。残念ながら読んでみたい気持ちにはならなかったな。