☆☆☆☆★

 

「夏・秋編」2014年公開

「冬・春編」2015年公開

大好きな橋本愛さんが主演ということで観てみました。

正しくは、夏編・秋編・冬編・春編といった四季それぞれのエピソードで、2編ずつまとめて公開されました。原作はマンガだそうですが、私は知りませんでした。なので、まったく予備知識なく鑑賞。

寒村で農業を営む一人の若い女性の物語。情緒的で叙情的な映画で、大きな出来事や展開はありません。四季折々の風景と、季節毎に収穫される作物で作る料理が美しい。

凄いですね、とりあえず凄いというのが最初の感想でした。何が凄いって、橋本愛が凄い。農作業も料理も、おそらく吹き替えなしで演じていたのではないでしょうか。舞台は岩手県の限界集落。季節がそれぞれに過酷な田舎です。約1年間、自然と向き合い、農業と向き合い、料理と向き合ってきた、その生々しさを感じます。橋本愛にとって、役者としても人生にとってもターニングポイントとなった作品ではないでしょうか。

ざっくりとしたドラマ性はあります。一度は都会に出たものの故郷に帰ってきたイチコは母が失踪した生家で、農業による自給自足にいそしみながら母から教わった料理で日々を生きる。母との思い出と、糧となる命への想いを込めて料理を作る、それが淡々と描かれます。そこにイチコの人生や背景が映し出されます。しかし描かれるのはほとんどが農業と料理。集落・小森の豊かな自然と、そこに生きる人々の営み。過疎農村というと殺風景で寂しいイメージしかありませんが、登場人物の誰もがその現実を受け入れつつ悲観していません。映像の美しさと相まって、ほのぼのと、ゆったりと時間が流れる感じです。

共演の松岡茉優はドラマ「あまちゃん」映画「桐島、部活やめるってよ」でも共演しています。若手俳優としては三浦貴大。イチコの母親役で桐島かれん、知り合いの農家さん役で温水洋一。著名な俳優はこれくらいで、あとは馴染みのない俳優さんが多いです。しかし俳優の有名無名にかかわらず、良い作品は撮れるんだという事を思い知らされました。

農業と料理がメインの作品なので、他者との関わりはそれほど多くは描かれません。台詞のほとんどはイチコの独白。橋本愛の演技力が試されますが、これが圧巻でした。農業だって料理だって、いつも成功するわけではありません。失敗に見舞われながらも、生きるために作り続けます。農業にも料理にも真摯に向き合う姿勢が、彼女の演技からは伝わってきます。そこにあるのは、やはり自然への感謝なのでしょう。決して人に寄り添うことはない過酷な自然。しかし人に恵みをもたらす自然。自然によって生かされている事への感謝が、彼女の演技から、台詞から伝わってきます。

様々な想いを抱きながら小森での生活を続け、紆余曲折ありながら配偶者を伴って三度小森に戻ってきたイチコが奉納神楽を舞うシーンは圧巻の迫力。自ら土にまみれ、包丁を握る、手抜きのない橋本愛の女優魂を感じる作品でした。

それにしても料理が美味しそうな映画って、いいですね(笑