☆☆☆★★

 

1989年公開。

予備知識なしで観ました。有名な映画だと聞いてはいたのですが、観たのは初めて。

美男美女は出ないし、劇的な展開もないし、芸術性というか雰囲気を楽しむ映画?そういう意味では、なかなか興味深くて面白いです。

中年のドイツ人夫婦の旅行者がアメリカの荒野で旅行中に夫婦ゲンカをおこし、女性が怒って荷物を持って車を降りてしまいます。男性が急いで追いかけるも、女性はまんまと夫を巻いて徒歩でモーテルに辿り着くのですが、それがバグダッドカフェ。一方カフェでも黒人夫婦がケンカをして、気の強い奥さんが夫を追い出したところでした。偶然にも夫を捨てた女性二人が、砂漠の真ん中で出会い、物語は始まります。

ドイツ人女性は太っていて、寡黙で物静かな雰囲気。カフェの店主は直情的で感情も行動もストレート。まったくタイプの違う二人の対比が面白い。まさに水と油とも言える二人ですが、徐々に距離を詰め、最後には親友となります。その過程を楽しむ映画なのかな。ただその過程は、ハラハラさせられます。まったくタイプの違う二人なので、ドイツ人女性・ジャスミンの好意も、なかなか店主・ブレンダには伝わりません。とは言えブレンダもその性格から突発的に反発し文句を言ってしまうものの、冷静になることでジャスミンの好意を理解し、謝罪の言葉も述べます。当初は短期滞在だったはずのジャスミンはカフェに集う人々に魅せられ、いつしか長期滞在に。カフェを手伝いつつ、荷物に入っていた手品セットで遊ぶうちにマジックを覚え、それがカフェの名物となります。寂れていたバグダッドカフェはすっかり綺麗になり、大繁盛。様々な人が集い、交流が生まれ、ドラマが生まれます。

正直、ところどころわかりづらい点はありました。ブレンダの子供二人とは誰のことなのか?外国人の年齢はよくわからないので、ブレンダの子供って何歳くらい?って感じです。ブレンダの年齢が直感的にわかれば、登場人物の誰が子供かすぐにわかるんでしょうけど。それとジャスミンの荷物が、間違えて夫のトランクを持ってきてしまったのか、もともとハリウッドで仕事をするために小道具を持ってきたのかわかりませんでした。それくらいジャスミンのマジックの腕前は見事でしたから(笑

時々差し挟まれるジャスミンのイメージシーンも、最初は戸惑いました。彼女に何かトラウマがあるのか、それとスピリチアルな表現手段を用いる映画なのか、と思ってしまいました。考えてみれば、単純に彼女の内面を表現しただけのようでしたが。

色使いも独特ですね。紹介写真でよく見かける、タンクの左側が緑で右側が青(空)も1シーンでした。あえてああいう現実ではあり得ない色使いや、特に1色だけを強調するシーン(夕暮れ)が印象的でした。

ラストシーン、バグダッドカフェに滞在する老紳士からのプロポーズを受けたジャスミンが「ブレンダに相談するわ」と応える当たり、ジャスミンとブレンダの友情の深さを物語っていたのではないでしょうか。

ディレクターズカット版でも108分と、それほど長い映画ではないので、お話しはテンポ良く進みます。登場人物はみんな個性が強いですが、悪人はおらず、鑑賞後に後味の悪い思いをする事もありません。前述の通り、劇的な展開はないし、話しもとんとん拍子に進むので、刺激がない面白みがないと思われる方も居るかもしれませんね。

主人公のジャスミンはどこかで見たなぁ、誰かに似てるなぁ、と思ったんだけどマツコ・デラックスに似てるんだ(笑