☆☆☆★★

 

2022年公開。

バットマンは好きだ。何作かシリーズが作られているが、クリストファー・ノーランの「ダークナイト」シリーズが一番好きです。

で、本作はその流れを汲むものではない。そうかといって「ジャスティス・リーグ」の系譜でもなさそう。リブート作品が多すぎて混乱します。「ぼくのかんがえたバットマン」を撮りたい監督が多すぎるのか、それともバットマンは確実に人気の取れるキラーコンテンツなのか?

それはさておき、テイスト的にはダークナイトに近い印象でした。今回の敵がリドラーという事で、謎解き要素が多く、練られた展開でしたね。バットマンも人間なら、敵も人間。過去もあれば歩んできた人生もあり、今現在の自分を構成する要素や理由も存在します。バットマンがバットマンになった理由があるように、リドラーがリドラーになった理由もある。相容れない人生が緻密に描かれていて見応えがありました。

リドラーの他にキャットウーマン、ペンギンも登場。ペンギンは劇中でも「ペンギン」と呼ばれていましたが、キャットウーマンは「キャットウーマン」と呼ばれるシーンはなく、ただ描き方からして間違いなくキャットウーマンを意識して設定された役でしょう。ペンギンは明確にバットマンに戦いを挑む役柄ではなく、ゴッサムシティの闇の顔役としてバットマンと対峙。キャットウーマンは、むしろゴッサムシティの闇の被害者的な立ち位置。パートナーである女性を殺されたキャットウーマンが復讐を企て、バットマンが彼女を守る展開。キャットウーマンは百合の設定。ここでも「多様性」「LGBTQ」ですか?映画界もそういうのを気にしなきゃいけないんだから窮屈な世の中になったもんだ。

バットマンは「ダークナイト」シリーズ同様、生身の人間で悩めるヒーローでした。とは言え「ダークナイト」シリーズほどの人間味は感じず。富豪であるブルース・ウエイン体でも、その富豪ぶりを示す描写もなく。逆に両親の死をいつまでも引きずっている印象。バットマンとブルースのギャップが大きくて、ブルースのパートが印象に残りません。「ダークナイト」シリーズではバットマンとブルースがバランス良く描かれていたんだけど、本作ではバットマンのパートが多くてブルースの印象が薄いです。個人的にはバットマン=ブルースなので、ブルースパートも丁寧に描いてほしかったかな。

アルフレッドの存在感をあまり感じないのも残念です。どうしてもダークナイトとの比較になってしまいますが、ブルースに忠実でありながらも独自の価値観と倫理観を崩すことなく、時にはブルースに苦言を呈し、しかしバットマンにとっては強力なバックアッパーであったアルフレッドの頼もしさが、本作では感じられませんでした。

一方で、謎解き要素が多いことからもゴードン警部補は目立っていましたね。ダークナイトシリーズではバットマンの協力者といった感じでしたが、本作ではバットマンの隣に立つ男として対等な関係に描かれていたのではないでしょうか。ゴードン警部補も市長候補も、黒人を起用したあたりにハリウッド映画の気遣いが感じられます。

それにしても汚職で私腹を肥やす著名人や財界人を処刑したリドラー、方法の是非はさておきどんな社会でも内包する問題ですね。社会に不満や不信をつのらせる人は沢山居るけれど、それをテロ行為として発現させる人はほとんどなく、理性を持って対応しています。それ故に、悪いことをしているヤツらがそれで見逃されていると調子に乗って反省をしていないのだとしたら、やはりその不公平は正さなければ、報いを受けさせなければ、鉄槌を下さなければ、と考えるリドラーのような犯罪者が生まれるのもやむを得ぬ事なのか。正義が機能していないゴッサムシティが生み出した闇なのか。バットマンもまた、ゴッサムシティが闇を払うべく生み出した正義の執行官なのだろうね。

逮捕、収監されたリドラーの隣の独房で笑う囚人は、ジョーカーなのかな?THE BATMANもシリーズ化されるんだろうか?