☆☆☆★★
2023年公開
シン・仮面ライダーを観てきました。公開中なのでネタバレしないように気をつけながら感想を書きたいと思います。
まず客層は、ほとんどがオッサンでした(笑
学校が休みに入ったからかロビーには若い人達がたくさんいたんですがね、シン・仮面ライダーのお客さんではなかったようです。リアタイで仮面ライダー1号の放送を見ていた人達でしょうか。
映画の全体的なテイストとしては、庵野監督が作った一連の「シン」シリーズとはちょっと違ってたかなぁ。どっちかというと「劇場版キューティーハニー(佐藤江梨子主演)」的な印象を受けました。考えてみたら「劇場版キューティーハニー」は約20年前に庵野が監督した映画でした(笑
なるほど、そういう事かぁ。
ショッカーが悪の秘密結社ではなく、人類の幸福を追求した結果を遂行する組織というのが、なんともなぁ。改造人間というとサイボーグのイメージですが、現代では遺伝子操作で身体能力を上げた超人が改造人間というのが、昭和世代には違和感がありますねぇ。でも考えてみれば原作者の石ノ森章太郎御大が、すでに「真・仮面ライダー」でバイオ兵器としての仮面ライダーをやっちゃってるから文句の付けようがないか(笑
そう考えると、本作は石ノ森章太郎氏の遺志を受け継いだ正統な後継作品って事になるのかな?
マスクを外せるのもマンガ版仮面ライダーのテイストを受け継いでいる印象です。他にも石ノ森章太郎作品をいろいろかいつまんでぶち込んでいると思える箇所が多々あります。ショッカーの元となった人工知能「アイ」が作った最初の情報収集デバイス「J」はキカイダーのような顔立ちだし、そこからアップデートした情報収集デバイス「K」はロボット刑事Kのようなビジュアル。緑川ルリ子には兄がいる設定で、兄の名が「一郎」なのと、兄が父の研究を引き継ぎつつ父とは違った道を選ぶのは、キカイダーの派生マンガ「キカイダー02」で見たような気がします。人ならざる存在になってしまった自分の体の変化に戸惑い苦悩する姿や、それでもその驚異的な力を人類の平和のために使おうと決意し戦いに身を投じる姿などは、まさに原作のDNAを受け継いでいると言えます。
そういったトリビア的な要素はマニアにはたまりませんが、そんな事とは関係なく、映像作品としてはどうだったのか。映画としては、そこが問題です。ぶっちゃけ、CGはしょぼい印象でした。安っぽいというか、もっとリアルにしてくれよって印象。格闘シーンはアップと細かいコマ割りでそれっぽく見せているけど、雑で迫力があるとは言い難い。ハリウッド映画を見慣れているので、今時の観客はその程度のCGや特撮では満足しないんじゃないか?言っちゃ悪いがテレビドラマレベル。むしろ昭和のぬいぐるみや爆薬を使った操演、特撮の方が味があって迫力を感じましたね。
メインキャストは本郷猛に池松壮亮、一文字隼人に柄本祐、緑川ルリ子に浜辺美波。個人的にはそれぞれイメージじゃないなぁ。2005年に作られた「仮面ライダーTHE FIRST」の方が 役者としても世界観としてもテレビシリーズやマンガの仮面ライダーに近かったような気がします。
緑川博士役に塚本晋也が出ていましたが、彼は役者もやりますが監督もやります。「普通サイズの怪人シリーズ」「鉄男」などを撮っているあたり、予算とチャンスがあれば彼も仮面ライダーのリブート作品は撮りたかったのではないでしょうか(笑
竹野内豊と斉藤工が仮面ライダーを支援する政府のエージェントとして登場します。竹野内豊は「シン・ゴジラ」「シン・ウルトラマン」でも似たような役だったので、同じ世界観の作品として「シン・仮面ライダー」も描かれていることを示唆しているのかな。斎藤工は、まさにウルトラマンその人ですから、竹野内豊とコンビを組んでいるあたりからしても関連性を意味づけているのかも。最後にそれぞれの名前が明かされるのですが、竹野内豊が「立花」、斎藤工が「滝」ですって。最後の最後で仮面ライダーのピースが揃いましたね。このシーンには素直に驚きました(笑
まぁいずれも名前を拝借しただけで原作の役割ではなさそうですが。
「シン・ウルトラマン」に続いて長澤まさみも怪人役で出演していました。庵野作品に縁が出来たか?とは言えスケジュールの都合か出演シーンは短く仮面ライダーとの格闘もなし。友情出演みたいなものだったのかな。
本作の改造人間はサイボーグではなく遺伝子操作による強化なためか、絶命しても爆発はしません。機密保持のために泡になって消えます。テレビ版仮面ライダーも初期の頃は、爆発することなく怪人や戦闘員や襲われた人々が泡になって消滅するシーンがあったので、そのオマージュかな。それと現代技術の上乗せとしての超技術的な設定だからか、使われる用語も世代を反映していて、昭和世代には馴染みのない言葉が使われます。怪人ではなくオーグとか、生命エネルギーをプラーナと呼んだり、精神の安寧を提供する仮想世界をハビダットと言ったり。そもそもショッカーという組織自体の定義が違うしね。シンプルに悪の秘密結社で良かったんじゃないのかな。
できるだけネタバレしないように気をつけて感想を書いてみましたが、大丈夫ですかね、ネタバレしてませんかね?ここまで言っておいてなんですが、もしシン・仮面ライダーを観ようと思うんだけど、と言われたら止めません。仮面ライダーの系譜として、こういう解釈の作品もあるんだな、というだけで、けっして否定するものではありません。むしろオリジナルへの敬意とオマージュが詰まっていてトリビア的には面白いと思います。