GAMBA ガンバと仲間達:2015年公開
冒険者たち ガンバと7匹のなかま:1984年公開
前者はフルCGの3Dアニメーション。昭和世代としては後者に馴染みがありますが。それを踏まえて前者を見てみたわけですが。
う~ん、やっぱり絵柄にも声優にも違和感があります。たぶん後者を知らない世代にはそれなりに見れたのかもしれませんが。ストーリー的にはお子様向けアニメとしては悪くはありません。個人的にはノロイに「お姉」が入っているのが解せませんが。
現代風な解釈できれいにまとめられています。後者に登場するシジンは登場せず、その役割をガクシャが兼務しています。逆に後者に登場しないマンプクが登場、ボーボと役を分かち合っています。そのボーボは唯一の「仲間」の犠牲者となり死亡します。これを差し挟んだ意図は、ちょっと計りかねますね。前者にしても後者にしても、メインキャラ以外のネズミたちは容赦なくイタチの餌食になっているわけですが。
でまぁ前者を見てから、自分のイメージにある「ガンバの冒険」ってこんなんだっけ?と思ってあらためて後者を見てみました。昭和世代の贔屓目かもしれませんが、昭和のガンバは面白かったし雰囲気も臨場感も凄かった。平成ガンバに比べれば、紙芝居に等しいといっても過言ではありません。昭和版は、まんまアニメですが平成版は擬人化・リアリティにこだわりすぎな気がしないでもありません。アニメってのは緻密に描けば優秀ってものでもありません。しかし技術云々の問題ではなく、見せ方が圧倒的に上手い。ノロイの威圧感も恐怖感も、3DCGよりも雄弁でした。元が帯アニメを再編集したものなので、テンポも良いです。個々のキャラクターにもメリハリがあってわかりやすい。前者のガンバが熱血漢なのに対して、後者のガンバは脳天気。それも好感度が高いです。そう言えば、子供の頃からイカサマが好きでした。平成版のイカサマよりも、やっぱり昭和版のイカサマの方がクールでシニカルで恰好良い。平成版は尖りすぎです(笑
ガクシャも平成版はいかにも学者って感じ。説得力はあるんだけど、昭和版の方が愛嬌があります。声優は平成版は池田秀一さん(シャア!)、昭和版は富山敬さん(古代くん!)と、どちらも好きなんだけど。
今風に作らなければいけないというプレッシャーだったのか、今風に作りさえすれば良いという傲りだったのか、昭和世代としては当時の面白さ、作品の良さが受け継がれていないような気がしました。
なにより昭和版にはテーマソングにも歌われるキーワードがあり、それが本編のクライマックスでも効果的に使われていました。「尻尾を立てろ」がそれで、ネズミのプライド忘れるな、己を強く保て、負けるな頑張れ、といった意味で使われます。仲間達が叫ぶ「尻尾を立てろ!」は、どんな言葉よりも説得力を持っています。そういう意味でも昭和版の演出は単純ながら、単純だからこそわかりやすい醍醐味があります。
こうなると平成版のボーボの、仲間のために自らの命も厭わない犠牲的精神による死というのが、美談どころか逆に鼻につく演出にさえ見えなくもありません。個人的にはもともと死によって感情を揺さぶる手法というのはあざといと思っていたので、例えフィクションでも必然性のない「死」はできるだけ避けていただきたいと思っています。昭和版が仲間の死なしに、これだけ記憶に残る作品を作れたのですから、平成版も工夫して欲しかったですね。
いずれにしても元ネタは「冒険者たち ガンバと15ひきの仲間」という小説。それぞれの解釈の違いといったところでしょうか。どんな作品でも言われていることですが、メディア化された時点でそれは原作を離れた一つの作品だから原作と比較するのはナンセンス、なのだそうです。自分の感性に従って作品を見るのがベストなのでしょう。