☆☆☆★★
2018年公開。
原作はマンガで、知っていました。上手くまとめたなぁ、というのが正直な感想。実写化した当時、まだ連載は終わってなかったんだっけ?エンディングが原作とは異なります。まぁ映画版でも原作でも、獅子神のキャラが精神的に不安定であることに変わりはないので、こういうアプローチもありか?
そこそこイメージ通りで面白かったです。特撮は、ハリウッドの技術に比べるとまだまだかな。かつては日本の方が上だったのにねぇ。リアリティという点で、まだ「作り物」っぽさを感じます。
作品の出来に対してキャストが無駄に豪華な気もします。獅子神に佐藤健、獅子神の友人に本郷奏多、獅子神がかろうじて人間でいられる拠り所の詩音に二階堂ふみ(!)、獅子神を追う刑事に伊勢谷友介。正直な話し、そろそろ佐藤健と本郷奏多と二階堂ふみに高校生はキツくないか?犬屋敷の娘・麻里に三吉彩花が演じているけど、身長高すぎて同級生とのシーンは浮きまくっている。主演が木梨憲武。憲武は嫌いじゃないというか、とんねるずの相方に比べればはるかに芸達者だし才能があるので好きなんだけど、そもそも犬屋敷の設定が「50歳代なのにお爺ちゃんに間違われるような容姿」なので、もっと老けメイクが必要だったのではないだろうか?
キャスティングに思うところはあるけれど、演技自体はとても良かったです。老けていない以外は木梨の演技も、佐藤健も本郷奏多も二階堂ふみも、ほぼイメージ通り。特に本郷奏多と二階堂ふみが良かった。どっちも原作のイメージ通り。獅子神は、言っちゃ悪いけど「あのキャラ設定」だから誰がやってもあまり変わりはなかったかな。
原作では犬屋敷のお父さん、家族全員から受け入れられて幸せそうだったのに、映画ではその正体を知るのは娘だけってのはちょっと寂しいかな。まぁ正直言って、原作でもお父さんの功績を知った途端に掌返す家族達もどうなの?っては思ったけど。
こうして考えると、これって家族の物語なのかな。犬屋敷と獅子神、相反する極端に異なる2家族の物語。犬屋敷のお父さんは、家族が居て、家族のために頑張っているのに全然認めてもらえず理解してもらえない。であるにもかかわらず、家族を守ろうと必死に頑張る。一方の獅子神は家族と呼べるのは母親だけ。その母親も自身が犯した罪に巻き込まれ自殺してしまう。唯一の家族を失った獅子神は暴走してしまう。家族を失った獅子神が、彼に好意を寄せる詩音によってかろうじて人間性をつなぎ止めていたにもかかわらず、詩音と彼女の祖母は獅子神討伐の銃撃戦に巻き込まれて亡くなってしまう。家族も、家族同様に思っていた人達も失って、獅子神の絶望感は日本という国そのものに向かう。獅子神の行動原理に理解はできる、でもそれを赦すことはできない。全ては自分がまいた種ではないか。他者を恨み、他者を巻き込むのはお門違いだと思う。わかっている、わかっているけど、獅子神のような感情に囚われたことはないか?もし自分が獅子神のような能力を持ってしまったら、同じ事をしないという保障はあるのか?そのジレンマが怖い。
一方で犬屋敷のお父さんは、あまりにも善人過ぎる。獅子神が人間の持つ負の部分を反映しすぎているがために、犬屋敷のお父さんは善の部分を象徴しているのだろう。ただ原作ほどのインパクトはない。映画版の善行は、家族へのアピールも含めてちょっと控えめだったかな。
途中までは面白かったんだけど、ラストがイマイチでした。麻里が撃たれて生きているのもおかしい。右胸とはいえ、肺の位置ですからね、あんなに長く生き長らえて会話もできるとは思えない。家族への思いが高まって獅子神を玉砕出来るってのも、意味不明なチート能力。とにかく緊迫したシーンでテンポ悪すぎ。ビルから投げ落とされた娘を抱えてテラスのコンクリぶち破って軟着陸するけど、その衝撃で普通は死んでるから。それでなくても胸撃たれてるのに。
盛り上げよう盛り上げようとしすぎて、逆にリアリティ欠いちゃった感じかな。
いろいろなんくせばかりつけているけど、それなりには面白かったです。獅子神の不遇を思えば、詩音は殺さないでほしかったなぁ、原作では死んでなかったはずだし。もっとも原作の最終話は「なんだったんだ?」と思わなくもないけど(笑
真面目な話し、自分が獅子神を同じ能力を持ったら、獅子神と同じ事をしないと言えるか?私には自信がないな(笑