☆☆☆★★

2019年公開。
コメディとしては、そこそこ面白いと思います。正直、腑に落ちない点も多々ありますが、そこはコメディということで大目に見ることが出来ます。
舞台は八丈島。「東京では」とナレーションが入る度に「ここも東京ですが」と、いちいち訳注が入るのが面白い。母子家庭で次女が高校入学と共に反抗期に突入。生意気な態度に業を煮やした母親が、高校生には恥ずかしい「キャラ弁」を毎日作って持たせるのだが、それが3年間続き、その間に親子にも様々な変化があったという、お話し。たぶんそれだけでは盛り上がらない、作品的に起伏がないと思ったからか、キャラ弁のブログをきっかけに交流を持つようになった東京の父子家庭の物語も絡めるという展開。
キャラ弁と言うけど、終盤はネタが尽きたのかメッセージ弁当やダジャレ弁当に。海苔で文字を切り抜いて載せているだけで、キャラクターじゃないじゃん(笑
最初は反抗期の娘に対する嫌がらせと言うか、コミュニケーションの一環みたいなもんだったのんだけど、終盤はほぼ意地で弁当作ってるみたいな感じになって、正直「えー、形だけでそんなにグダグダになってるんだったら、適当にやめれば良いのに」とも思った。何より、働き過ぎで脳梗塞一歩手前までなって、それでも無理を押してキャラ弁作って、万が一にも命を落としたらお互いに後悔しか残らないんじゃないのか?
キャラクターが基本的に海苔を切り抜いて載せるものなんだけど、売れないお笑い芸人のキャラ弁はいいとしても、そのお笑い芸人がナレーションをするんだよね。これがかなりウザかった。スギちゃんとかこじまよしおとかゲッツの人とか、事務所のゴリ押し?って感じ。面白くないどころかシラケるだけなんで勘弁してほしい。居酒屋に集う同級生とおぼしく仲間にも森三中がいたし、本当に勘弁してほしい。コメディと悪ノリ・悪ふざけは違うんだよね。そこらへん、ちゃんと認識してほしい。
正直、それ以外は結構面白かった。母親役の篠原涼子は、バイタリティー溢れる頼れるかーちゃんって感じ。見た目が可愛らしいだけに、エキセントリックな演技がギャップ萌えでした。次女役は芳根京子。高校生役だけど違和感なし。可愛いし、一方で憎たらしい。それほど年齢の変わらない土屋太鳳の高校生役は「ホント、勘弁してくれ」って感じで、ほぼコスプレ化しているけど、芳根京子は自然だったなぁ。それぞれの特性というものがあるんだから、そこはキャスティングが配慮しなきゃね。長女役に松井玲奈。なんかAKBグループの人らしいって認識しかなかったけど、華はないけどしっかり者でそつのない頼れる長女って感じで良かったです。
芳根京子の多感な女子高生の演技も良かったし、もちろんエピソードも演出も良かった。例えば、好きな男子にカノジョがいて、世界の終わりみたいに何もかもがイヤになって母親に八つ当たりして家を飛び出すとか、大人から見れば一過性のものだしくだらないと思うかもしれないけど、あの年齢にとっては本当にそれこそが世界の全てだったりするんだよね。好きな人が自分を見てはくれない、その失望と絶望に押し潰されそうになって、世界が終わったような気持ちで自暴自棄になる。そんな気持ちが表現されていただけでも、この作品には価値があると思ったね。
親子とは言え女同士だからね、確執はあるわけですよ。その緊張感がよく伝わってきました。一方で、それをコメディとして茶化しているのも面白かった。こういう空気感は好きだな。ただ緊張感があるだけでなく、そこにクッションのように入ってくる長女の存在感も、かなり効いていましたね。ここらへんの演出、構成は見事だったと思います。
ネタバレになるけど、卒業式の日に特大弁当を持たせる親もどうかと思うけど、重い重いと文句を言いながらそれを持って学校に行く娘もどうかと思いますね。と言いつつ、不覚にもその弁当を開けたシーンで思わずもらい泣きしてしまったんだけど(笑
アナザーストーリーとして、篠原涼子のブログを参考に不器用ながらも幼稚園の息子のためにキャラ弁を作る父親は、忍耐強いというか、よくできた父親だなぁと思いました。まぁ結果的に多少ピントはずれていたようですが。全体的な流れからは、必要のないエピソードだと思うし、特に感動もしないんだけど。
とにかく芳根京子も可愛いんだけど、篠原涼子の存在感が凄かったな。かつてダウンタウンの「ごっつえぇ感じ」でイジられまくっていたあの篠原涼子が、こんな女優になるとはねぇ。若い頃の苦労はやっておくもんだねぇ、という見本(笑