☆☆☆★★
2019年公開。
大好きな小松菜奈が出ているので観てみました。一方で、それほどでもない門脇麦が出ているのでそれほど期待はしていませんでした。結論から言うと、かなり面白かった。
前半は、だいたいの展開が読めてしまって、しかもキャラ設定があまり好きな感じでもなくて、ちょっと残念な気持ちになってしまった。門脇麦演じるハル。小松菜奈演じるレオ。成田凌演じるシマ。ハルは才能のあるソングライター。バイト先でちょっと変わったキャラのレオに惹かれ、一緒に音楽をやらないかと誘う。シマは元ホストだが生き方を変えようと、ハルのローディーに志願する。実はハルはレズでレオが好き。レオもハルの思いを受け入れようと音楽ユニットを組むが、話題になるのはハルの音楽性ばかりで、次第に自分の存在意義に疑問を抱くようになり、ハルに反発。シマは実はハルに恋い焦がれてローディーとして応募したが、レオはシマに恋をする。「ユニット内恋愛禁止」の大前提の元で、いびつな三角関係となる。インディーズユニットとしては異例の人気を誇る「ハルレオ」だが、三角関係に疲れたハルとレオは今回のツアーを最後にユニットを解散することを決める。ギスギスした雰囲気の中、全国ツアーが幕を開ける。
と言う、ロードムービー風の映画。序盤で「もういいや」と思ったのは、やっぱりハルのレオに対する百合感情。一方でレオはセックス依存症みたいに行きずりの男性と関係を結び、ハルとシマをやきもきさせる。退廃的な性を交えた映画なら、御免被りたい。実際、途中まではそういうイメージは否定しがたい。が、中盤からだんだん面白くなってくる。シマがホストあがりのチャラいいい加減な男というわけではなく、非常に張り詰めた空気感のハルとレオの間で、絶妙なバランサーと言うことがわかるから。この映画が面白いのは、シマ役の成田凌の役割によると言っても良い。ハルとレオだけを見たなら、本当にレズの痴話げんかにしかならない。ハルレオの裏方であるシマの存在によって、この物語は第三者に正しく伝えられるのだろう。
レズビアンという特殊な性癖故の切なさを賛美しようという気持ちはさらさらない。しかしながら、性別はどうあれ、恋する者達の切なさというのは間違いなくあるのだろう。表舞台に立つハルレオの葛藤とは裏腹に、レズと思われるファンの女の子2人の様子も描かれる。心を通わせる者と、通わせることができなかった者達、その対比がハルレオの歌声に乗せて切なく表現されていると感じるのは私だけだろうか?
それにつけても、小松菜奈は普通に歌がうまい。「坂道のアポロン」であえて歌声を披露しなかったのはなぜなんだろうか?門脇麦も、そこそこに歌は上手い。まぁそうでなければこの映画は成立しないわけだが(笑
小松菜奈はボブのショートカットも可愛いな。
門脇麦は、相変わらずちょうど良いブスって感じ(笑
けっして馬鹿にしているわけではなく、演技力表現力があるので、むしろリアリティがあって物語に真実みを持たせる。
しかし本作に限って言えば、シマ役の成田凌なくして物語は成立しない。ハルレオという人気ユニットを支えるのも、「さよならくちびる」という映画を支えるのも、実はシマだったりする。
ちょくちょく回想シーンが挟まれるけど、ちょっとわかりづらかったかな。時系列がわかりづらいのは混乱の元だからね。
ライヴシーンも臨場感があってなかなか良かった。主演二人の歌声も申し分なかったし。表題曲「さよらなくちびる」は秦基博の提供だけど、挿入歌2曲はあいみょんの提供だそうな。そう言われてみると、作品全体のテイストもなんとなくあいみょんの世界観を感じるような気がしますね。あいみょんファンには観てもらいたい作品です。そしてどんな感想を持ったか、聞いてみたいかな。
人気が出たハルレオをインタビューするテレビ番組のシーンがあるんだけど、あれはちょっと演出過剰だったような気がしますね。あんな露骨なインタビュアーはいないでしょう、いくらなんでも(笑
声もしゃべり方も雰囲気も全部気持ち悪いのは、そういう演出なの?レオじゃなくても怒るよ(笑
ラストシーンは、そうまとめましたか~。確かに意地の張り合いではあったかもしれないけど。今後も同じようなトラブルは続くんじゃないの?となると、やっぱりシマにしわ寄せがいくんじゃないのか、と。恋愛よりも歌うことが、音楽が、大切だと思えるならそれでもいいし、そういう選択ができるのも若さだよな。
全編通して、ハルもレオもしょっちゅう煙草を吸ってるのが気になった。今時、映画に煙草を登場させるのも珍しいし、喫煙者が減っているので共感を得るには向かないアイテムだと思う。ましてやシンガーは喉が命なので煙草は御法度。もちろんプロでも吸っているシンガーはいるけど、個人的には感心しませんね。あんたのその声を、その歌を待っているファンのことを考えるなら煙草はやめるべきだ、と思ってしまいます。プロ意識が足りないんじゃないの?とさえ思います。ハルレオはプロじゃないけど(笑
若い頃に音楽をやっていて、やめてしまった人、今も趣味で続けている人、挫折してしまった人、それぞれに思うところはあるだろうけど、たぶん共感はできるんじゃないかなと思える作品でした。