☆☆☆☆★
 
2018年公開。
最初に謝っておきます。すみません、いろんな意味でナメてました。くっそ面白かったです。
1.原作がマンガなので、所詮マンガの実写化なんてたかが知れている
2.土屋太鳳が主演。土屋太鳳は好きじゃないし、他の映画を見ても上手だと思えない。
でも実際には、凄まじかったです。怖かったです。土屋太鳳も芳根京子も上手かった。
一応、前フリだけ語らせていただきます。絶大なる人気を博した美人女優・淵透世。彼女には娘がいた。娘の累は醜女で顔には大きな傷があった。母親譲りの抜群の演技力がありながら、その醜悪な見た目で常に日陰を歩く人生だった。しかし累には母親から授かった口紅があった。この口紅を塗ってキスすると相手と顔を交換できるという、魔法の口紅(笑)だった。成人した累の前に、演出家と名乗る羽生田という男が現われる。何故か彼は口紅の秘密を知っており、美人だが演技は全然ダメな女優の代役をやらないかと持ちかけるのだった。

映画化されたのは原作の一部。原作ではこれ以降、さらなる地獄が待ち受けるんだけど、この映画だけでも十分に愛憎の相剋、ドロドロ・ギスギス感が詰まっていて、恐怖と狂気すら感じました。もともと演劇って、突き詰めていくと狂気じみたものがあるというイメージを持っていたので、この映画の表現方法にもとても合点がいきました。
とにかく、累役の芳根京子もニナ役の土屋太鳳も、鬼気迫る。口紅によって、芳根京子はニナに、土屋太鳳は累になるんだけど、顔はニナなのに中身は累の土屋太鳳も、顔は累なのに中身はニナな芳根京子も、見事に演じ分けられていて違和感なし。実力はないくせに無駄にプライドが高くて高飛車なニナ、演技への熱く深い情熱を秘めながら陰鬱に生きるしかない累、どちらの顔になっても、どちらの女優も「累」と「ニナ」をイメージ通りに演じていたのには驚嘆しました。
この二人に関しては、なにも言う事はありません。素晴らしいの一言に尽きます。でも共演者については、ちょっと言いたいかな。羽生田役の浅野忠信、恰好良すぎます。羽生田を演じるなら、もっと卑屈で卑劣な下衆野郎でなくちゃ。烏合役の横山裕は、意味なく無駄なジャニーズ枠ですかね。実力者がひしめくなかで、彼だけが浮いていたような気がするんだけど。逆に、ほぼ罰ゲームな気がしないでもない。日本映画のジャニーズ枠、やめませんか?
累の母親、淵透世に壇れい。呪縛のように累が観る幻として登場しますが、モノトーンの中の美人という事で、非常に謎めいた美しさを醸し出しています。「金麦」のCMの可愛い庶民的な奥さんという感じではありません。非常に崇高で神々しい存在感。本来の女優としての実力を見せつけられた気がしました。
それとやっぱり累役の芳根京子は美人過ぎるなぁ。累はもっと醜女じゃないと。映画の出来としては文句ないんだけど、原作のイメージからすると綺麗すぎますね。ニナが高飛車な美人という設定なので、芳根京子と土屋太鳳の役柄を入れ替えても良かったかも。顔に大きな醜い傷があったとしても、芳根京子は美人だわ。スタイルも良いし、高飛車設定ならニナ役でも良かったんじゃないかな。まぁそこも含めて「入れ替わり」の妙だったのかな。
2時間でまとめなきゃいけないので、多少のご都合主義や説明不足は否めない。それでも凄い緊張感のある作品に仕上がっていて、見応えはありました。原作を知っていても知らなくても、情念の世界に抵抗がなければ楽しめる映画ではないかな?