☆☆☆★★

2009年公開。
手塚治虫原作というのは知っていました。玉木宏と山田孝之のW主演。石田ゆり子が事件の真相を追う新聞記者として出演していますが、この頃はまだ「綺麗なおばさん」と言うよりはまだ「綺麗なお姉さん」でしたね(笑

ストーリーとしては、ある島で極秘裏に開発されていた毒ガス・MWが漏れ出し、島民は死亡。政府はこの事実を隠蔽すべく生き残った島民も虐殺して事件を闇に葬り去った。しかし、この事件には生き残りの2人の少年が居た。命からがら本土に逃れ着いた少年は、一人は銀行員になり一人は神父になった。しかし銀行員となった少年・結城(玉木宏)は、微量のMWを吸ってしまったため、死期が近づいていた。自分達の島を破滅に追いやった張本人達に復讐し、この事実を死をもって世間に思い知らせようと凶悪犯罪に走る結城。一方、結城に命を救われたことを恩義に感じ、結城の計画の荷担するもう一人の少年・賀来(山田孝之)は暴走する結城に心を痛めていた。連続猟奇殺人事件の犯人として結城に目星を付ける刑事、事件を追ううちにMWの存在を突き止めた女性記者、それぞれの思惑が絡み合いながら物語は最悪の結末に向かって転がっていく。

表の顔はエリート社員、裏の顔は狡猾で冷酷な犯罪者、2つの顔を持つ男のバイオレンス犯罪サスペンスというと松田優作の「蘇る金狼」「野獣死すべし」を思い出す。いかんせん、それに比べると全体的に小粒なイメージは否めない。シナリオの問題もあるだろうけど、玉木宏がハンサムすぎるのが問題なのかな(笑
松田優作のような男臭さが足りない。ギラギラした熱くてどす黒くて重厚な「熱」や、狂気が足りない。スマートすぎるんだな。もっと壊れた感じが欲しいな。
それは刑事役の石橋凌にも言える。野獣のような問題刑事なのか、気持ちが空回りする窓際刑事なのか、キャラ付けが中途半端な感じ。後半の早い段階で結城の身元が割れてしまうわりには全然結城を追い詰めることができず、結城対警察の駆け引きについてはあまり緊張感というか面白みがなかった。
石田ゆり子が事件の真相に近づいていく過程や、山田孝之の苦悩と逡巡など、見所はあるんだが、全体的に緊張感が足りない印象かな。これは演出の問題か、カメラワークの問題か。作り方次第ではもっと化けたんじゃないのかなぁと、残念な気はしますね。