☆☆☆★★
2017年公開。
たまたま見たんだけど、なかなか面白かった。
まず、有名な俳優、知ってる俳優が誰も出てこない。
2017年作品とは思えないほど、「ウルトラQ」や「怪奇大作戦」のテイストを感じる。
ザックリ言ってしまえばB級映画テイストが強い。実際、カメラワークや台詞や舞台設定も、なんとなく昭和を感じさせます。
それに題材も、けっして目新しいものではない。「アルジャーノンに花束を」に近いものを感じます。
それでも面白いと思えるのは、「古さ」が「新しい」と感じる時代だからなのか?それとも、古い人間が観てどこかノスタルジーを感じてしまうからなのか?作り手は、どこまで意図して作っているのか?
脳の信号を読み取って機械を動かす研究をしている研究室。研究員の長谷川は別なアプローチとして、ネズミと自分の脳波をシンクロさせて、ネズミを自分の思い通りに動かす研究を秘かに進めていた。同僚にリーダーの座を奪われた長谷川を気遣う助手の木下。彼女は顔にアザがあることをコンプレックスに感じていた。長谷川と木下は恋仲になる。認知症を患っていた母親を介護していた兄夫婦が海外赴任となり、長谷川が母親の面倒を見ることになる。実験で脳波をシンクロさせたネズミの脳細胞が活性化した事を知った長谷川は、脳波のシンクロで母親の認知症が治るのではないかと考える。禁断の実験は、やがて怖ろしい結末を迎えることになる。
倫理的にどうなの?と思う一方で、マザコン気持ち悪い、とも思う。ほぼ近親相姦。不快感は強い。シンクロによって若返っていく母親。精神に異常をきたしていく長谷川。これはホラー映画と言ってもいいね。そういう意味でも「ウルトラQ」や「怪奇大作戦」のテイストを感じます。しかし、狂っているのは研究に取り憑かれた長谷川か?それとも若さへの渇望を満たすために息子さえも食いつぶそうとする母親か?あるいは両者の利害が一致したのか?母親の意識に支配された長谷川が木下にメスを突き立てようとしたのは、本当に母親の意志なのか?その時、母親に意識はあったのか?最後に抗う長谷川の、それが残された意識だったのか、良心だったのか?「僕はバケモノになってしまった!」それはすでに、母親でも長谷川でもなかったということなのか?
せっかく張った伏線なのに回収されていないのが残念。木下のアザは、そこから更なる狂気を産むのかと思ったけど、意外と常識的でした。長谷川とシンクロしたネズミが早々に死んでしまい、しかも保管していた死体が腐っていたのは、その後に母親に訪れる悲劇を予感させたんだけど、結局母親は若返っただけで「細胞の暴走」には至らず。ただ長谷川も母親も自我崩壊。最後の長谷川の動きがネズミのようだったのは、何の暗示だったのか?
いろいろ隠喩はあるのかもしれないけど、ちょっと伝わらないかな。予算のかかっていないB級映画なら、もっとアイディアで突き抜けても良かったんじゃないかな。