☆☆☆★★
1968年作品
言わずと知れた「ゾンビ」の原点であり、古典。全てのゾンビ系映画はここから始まりました。監督は「ゾンビ」のロメロ監督。ゾンビ映画は本作から始まり「ゾンビ」で完結していると言ってもいい。その他のゾンビ系映画は、全て派生系であり正統なゾンビ映画とは言えないと私は考えている。
「ゾンビ」以降のゾンビ映画が派手な血飛沫と視覚的な刺激に訴えるスプラッタホラー化しているのに対して、本作はモノクロ作品で、画面サイズも4:3。臨場感や生々しさや刺激はないけど、これはこれで味がある。年代的な背景もあり、ゾンビの特殊メイクもそれほど凝ってはいない。昨今のゾンビ系映画を見慣れた方々には刺激がなさ過ぎて面白くないかもしれないけど、本作を見ると以降に作られたゾンビ系映画に必ずと言っていいほど登場するモチーフを見ることが出来て、違った意味で面白い。
本作を基準に考えると
・蘇った死者を「ゾンビ」という。けっして「感染」するものでない。
・動きや音に反応する。動作は機敏ではない。力は強い。
・発生原因は不明。金星探査船の放射能が原因との説もある。
・火を恐れ、頭部を破壊されることによって活動を停止する。
以上がゾンビの条件と言ってよさそうです。これに準拠しない派生系のゾンビ映画は、はたしてゾンビ映画と言ってよいものか悩むところだ。
それはさておき、ゾンビに襲われて建物に逃げ込んで籠城する、というお約束の展開もすでに本作から始まっている。墓参りに訪れた兄妹が最初にゾンビに襲われ、妹は命からがら民家に逃げ込む。てっきり彼女が主人公かと思いきや、次に逃げ込んできた黒人青年がリーダーシップを発揮して、彼が主人公に。他に若いカップル、負傷した娘を連れた親子が、襲い来るゾンビの群れと対抗するのだが、家の中でも対策を巡って対立が起きる。さらに負傷した娘が絶命しゾンビとなって父母を襲うというゾンビ映画の「お約束」な展開も。
他のゾンビ映画は、ゾンビが圧倒的に優勢で人類には絶望しかないデストピアな展開が多いけど、本作はまだ人類の方が優勢で、冷静な自警団がゾンビを狩りながら生存者を助け歩いている。ゾンビの群れに襲われることもなく余裕を持ってライフルで確実にゾンビを仕留めて行っているんだけど・・・。ようやく夜明けを迎えた主人公が、ゾンビと間違われてよりによって自警団に頭を撃ち抜かれて死んでしまい物語は終わる。いずれにしても後味の悪い終わり方であることに変わりはない。
結局、ゾンビも怖いが人間も容赦ないって事なのか?
無駄にダラダラ長くないし、引っ張った展開で冗長になることもないので、見やすくて面白い映画でした。ホラー映画がダメな方でもゾンビ映画の古典として見られると思うし、見ておけば最低限の基礎知識は学べると思います(笑