☆☆★★★

2020年公開。
「今日も嫌がらせ弁当」は女子高生と母親の弁当にまつわる作品でしたが、こちらは男子高校生と父親の弁当にまつわるお話し。
いい話なんだろうけど、感動もしないし腑に落ちない点が多かった。
井ノ原快彦の父親役はいいとしても、道枝駿佑の高校生役はどうなんだ?調べてみたら道枝駿佑もジャニーズなんだな。なんだ、ジャニーズのジャニーズによるジャニーズのための映画か、と鼻白んでしまった。ジャニーズでもちゃんと演技が出来る人、役に適した人が出るのならかまわないんだけど、道枝駿佑は違和感しかない。
そもそも息子は、一浪して高校に入学したんだけど劣等生な演出はなし。一浪している、クラス内での違和感や、お互いに気を使い合うよそよそしさ、居心地の悪さみたいなものもさほどクローズアップされず。それにまつわるトラブルやエピソードもなし。積極的にクラスに溶け込む陽キャでもないし、ヒョロメガネの見た感じのイメージとしては陰キャ。それなのに髪だけは茶髪。統一性なく、何故彼をこの役に当てたのかという疑問しかない。
息子が父親に「お弁当の量なんだけど」って話しかけるシーンで、結局言わず仕舞いだったんだけど、てっきり「友達に食べられるから量を増やして」って言うのかと思った。その後のシーンでお弁当を食べずに捨てるシーンがあって、食べない理由があるのか、また父親がやらかしたのかと思ったら、その後のクラスメイトとの会話でようやくダイエットしているという事が判明。好きな女の子が痩せ形好きなので告白するためにダイエットしているらしいので、前述の「お弁当の量」の話しは「減らして」って事だったらしい。あのなぁ、この息子、ひょろガリなのにダイエットとか本当に説得力ないわ。恋する全ての高校生にケンカ売ってんのか?とすら思ったよ。これで中肉中背の標準的な体型ならダイエットにも説得力があったんだけどな。案の定、ストーリーだけでは全然伝わってないじゃん。結局、登場人物に合わせて役者を選ぶのではなくジャニーズありきで作られた作品って事か。
父親についても、息子が悩んでいても道を逸れても不躾な態度を取っても、叱らず、悩まず、ブレず、ひたすらにポジティブ。が、それが魅力なのかもしれないけど私には人間味のない無責任な男性に映りました。よく言えば泰然自若で包容力のある心の広い頼り甲斐のある父親なんでしょうけど。一方でミュージシャンとしてやりたい放題なのは息子の言葉からも語られるし、高校3年間欠かさずお弁当を作った事以外は、お調子者で軽薄な印象しか受けません。前述のお弁当を捨てられるシーンを見咎めても、叱るわけでもなく、質すわけでもなく、なんかそれっぽい事を一言いって終わるし、なんか人間味がないんだよな。
他にも違和感や疑問は多々。離婚の時に、何故息子は母親ではなく父親を選んだのか?記念日にも連絡もなく帰りの遅い父を待ち続けた母と息子。すれ違いの生活で疲弊する母親を見ていながら、何故息子は父親を選んだのか不明。作中で母親にその理由を語るシーンもありますが、まったく説得力がない。父親と恋人との関係も、軽いんだよな。結婚を考えるほど真剣におつきあいをしているらしいんだけど、言葉が上滑りしている感じで、そりゃ彼女にしてみれば信用しきれない点は否めず、別れるのももっともだよなぁ。一方で、それでもポジティブで真っ直ぐに気持ちを伝える父親って、年齢的なものを考慮しても「どうなの?」って思ってしまう。そもそも事務所の女の子に手を出すなんて、仕事に差し支えるとは思わないのかな、お互いに。
息子の同級生役で森七菜が出てたけど、彼女はヒロインではなく、こういう何でもない役の方が存在感があるというか違和感がなくて良いな。
ジャニーズファンはいいかもしれないけど、普通の映画ファンが見たら物足りないんじゃないんだろうか?