☆☆☆★★

2020年公開。
テレビ放送していたのを録画してみました。とても人気のあるアニメで、感動作品だという評判は聞いていました。それ以外の予備知識なしで観て、見終わった後に疑問点を検索してみました。
泣けるかどうかというのは、世代によるのかもしれません。確かに感動的な話しではありますが、私は泣けませんでした。
まったく架空の世界のお話しだというのはわかるのですが、登場人物の生活様式があまりにも「こちら側」の世界に寄りすぎていて、逆にいろいろ違和感を感じてしまいました。
最も気になったのは「ドール」という呼び名です。一般的にドールというのは人形のことで「こちら側」の感覚からすると意思を持たない者というような蔑称に聞こえてしまいます。劇中でドールと呼ばれるのは「自動手記人形」、いわゆる代筆業の事なんだけど、だったら代筆屋と呼べば良いのに、どうしてドールなんだろう?最初、ヴァイオレットが義手だから機械扱いされて、なおかつ表情や感情に乏しいから侮蔑の意味で呼ばれているのかと思ったんだけど、そういうわけでもなさそう。調べたところ、元々は音声を文字に起こす機械があり、それが自動手記人形=オート・メモリーズ・ドールと呼ばれていたそうで、そこから代筆業務に携わる人々をドールと呼ぶようになったとの事。けっして蔑称ではないんだけど「こちら側」の言葉を意識すると、あまり良い気分ではないですね。
気になると言えば、ヴァイオレットの義手はとても精巧に作り込まれており、高度な科学技術が発展した世界のような気がするんだけど、その割りには通信技術が未発達で、いまだに手紙に依存しているというのは文明としてはずいぶん歪な気がしました。まぁ、そういう世界なんだなと思うしかないんだろうけど「こちら側」の科学水準だって、あれほど精巧な義手はいまだに開発されていないというのに。
義手と言えば、終盤でヴァイオレットが船から海に飛び込み浜まで泳ぎ着くシーンがあるのですが、義手で泳げるものなのか?重くて沈んだりしないのか?金属に海水は禁物じゃないのか?いろいろなハテナマークが浮かんで、本当は感動的なシーンなはずなのに感動できませんでした。素材が軽量なカーボン製だとか、海水の影響を受けない素材だとか、そういう予備知識でもあれば気にならなかったんだろうけど、劇中にそういう説明もなかったしなぁ。ひょっとしたら海水の成分も「こちら側」の世界とは異なるのかもしれないし。
私が観た作品は「劇場版」との事で、もともとはテレビシリーズだったようです。テレビシリーズから観ていた方々とは没入感が異なるでしょうから、こういう疑問・感想が出てしまうのはご容赦いただきたい。ヴァイオレットも少佐も、他の登場人物の方々も、それぞれに戦争の傷を引きずっているようで、物語自体は美しくても、やはり戦争はダメだなと考えさせられました。