☆☆★★★
1962年作品。
昭和の特撮に文句を付けても仕方がないんだけど、一応観たので記録だけはつけておきます。
地球の6000倍の質量を持つと推測される流星ゴラスが地球に接近。衝突すれば地球は消滅してしまう。ゴラスの軌道を変えるか、地球の軌道を変えるかしか方法はなく、地球上の各国が協力連携して最新技術を駆使して地球の軌道を変える、というお話し。
アイディアは良いんだけど、描き方が稚拙で緊迫感を感じない。生きるか死ぬかの瀬戸際なのに、淡々とした演出で恐怖感や焦燥のようなものが画面から感じられません。科学者や識者が慌てふためいていてはどうしようもないんだけど、周辺の関係者達からがそういう雰囲気を醸し出さなきゃいけないんじゃないんだろうか。
地球の軌道を変えるという発想も荒唐無稽だけど、そこに至るプロセスもあっさりしすぎ。各国の政治的な駆け引きなどまったくなく、あっさり協力体制が築かれます。それぞれの利権がらみで出し抜いたり出し抜かれたり、裏切ったり裏切られたりといった政治ドラマがないと、なんとも牧歌的な雰囲気になってしまいます。「今は国の未来よりも地球の未来を優先するべき時でしょう!」的な台詞が出る展開にはまったくなりませんでした。こういう点が物語に奥行きを感じさせなくしているんだよなぁ。
地球の軌道を変えるということは、どのような天変地異が起こるかわかりません。しかしその描写もあっさりしたものだし、市井の人々も警戒するわけでもおののくわけでもなく、のんびりと生活しています。昨今の天変地異映画からは考えられない演出。天変地異の一環として南極に眠っていた太古の巨大生物「マグマ」が目を覚まして暴れ、南極に設置した地球の軌道を変えるための推進装置を破壊してしまう、ってくだりは怪獣映画が得意な東宝らしいエピソードだけど、ここに怪獣を登場させる意味はあったのだろうか?脚本と演出はさておき、せっかくの本格SFパニック映画の質を落とすことになったのではないだろうか?
地球に起こる天変地異も、軌道の変更によるものではなくゴラスの接近によるもの、というのも物足りない気がします。そりゃ6000倍の質量を持つ流星が接近するのですから影響を受けるのは当然でしょうけど、バランスを保っていた軌道から逸れるというだけでどれほどの影響が地球にあるのかを考えはしないのだろうか?単純に考えても地場は狂うだろうし、潮力や斥力にも影響が出ると思うんだが。
本編とは直接関係ないけど、危険回避のために地球を動かすというとウルトラセブンの「ダークゾーン」を思い出してしまいます。こちらは1967年の作品。人工都市ペガッサは航行装置の故障のため地球に接近してしまいます。衝突を回避するためにペガッサの使者は地球に軌道の修正を依頼しに来るのですが、地球は自ら軌道を変えることができない事を知り、その技術レベルの低さに驚愕するというお話し。準備期間があれば、地球も軌道修正できたのかもしれませんね(笑