昭和34年4月10日、皇太子と正田美智子さんの「結婚の儀」が厳かに行われた。戦後最大の慶事ともいえる皇太子ご成婚に、皇室のみならず、全国民も大いに酔いしれた。
午後2時30分、皇太子と美智子妃殿下を乗せた馬車は、数多くの騎馬警官に護衛され、宮内庁玄関を出発した。新居・東宮仮御所までの移動を兼ねたパレ-ドである。
ご成婚を記念して国民の休日となったその日、東京地方の天気は快晴。一日パレ-ドを見ようと朝早くから詰めかけた群衆で、沿道は溢れていた。
パレ-ドが二重橋付近に差し掛かった頃、一人の青年が皇太子ご夫妻に向かって投石。さらに馬車に駆け寄って乗り込もうとしたが、警官に取り押さえられた。
と思ったのも束の間、今度は最後尾の騎馬警官が突然落馬。どうやら、馬が突然つんのめったらしい。馬、警官とも大事には至らず。
午後3時頃、四谷から信濃町の辺りを通過。麹町の聖イグナチオ教会からは慶祝の鐘が鳴り響き、100人の聖歌隊が「君が代」などを歌った。
とにかく、沿道はどこもかしこも人だらけで立錘の余地もない。中には、料金をとって自宅の2階に観客をあげる者まで出る始末。こうして、都民を大騒ぎに巻き込んだパレ-ドは、午後3時20分、ご夫妻の東宮仮御所到着で幕を閉じた。
その後の調べで、一般参観者の重傷者2名、軽傷者40名、警官の軽傷者4名(落馬した騎馬警官を含む)が報告された。ま、この程度ですんで良かったというべきであろう。
この様子は、テレビによって全国中継された。それを見ようと、ご成婚前にはテレビが飛ぶように売れた。昨年5月には受信契約者数100万件だったものが、ご成婚1週間前には200万件を突破したそうである。